【映画評】HiGH&LOW THE MOVIE

街のとある一帯を支配した最強のグループ「ムゲン」は、唯一屈しなかった「雨宮兄弟」と激しい抗争を繰り広げた末に、解散。雨宮兄弟も姿を消す。その後、一帯で頭角を現した5つのチームの頭文字をとって、街は「SWORD地区」と呼ばれていた。微妙な均衡を保ちながら勢力争いを展開するその場所に、ある男が戻ってきたことで、不穏な空気が漂い始める…。

 

EXILEや三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE らが所属するLDHと日本テレビがタッグを組み、ドラマやライブツアーなどが連動するプロジェクト「HiGH&LOW」の映画版「HiGH&LOW THE MOVIE」。物語は、とある一帯の支配をめぐって争う5つの不良グループの抗争を激しいアクションで描く男のドラマだ。EXILEと三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEありきの作品なので、映画としての体裁よりも、ダンス・パフォーマンス集団らしい、舞踏のようなアクションを魅せるためにほとんどの時間を割いている。山王街二代目喧嘩屋「山王連合会」、誘惑の白き悪魔「WHITE RASCALS」、漆黒の凶悪高校「鬼邪高」、無慈悲なる街の亡霊「RUDE BOYS」、復讐の壊し屋一家「達磨一家」。「SWORD地区」だけでもこれだけのグループがあり、さらに「ムゲン」「雨宮兄弟」etc.と登場人物があまりに多いので、途中から覚えることを放棄してしまった。

物語は、男たちのプライドを賭けた抗争というのが大枠だが、回想シーンがあまりに多すぎる。映画で初めて「HiGH&LOW」に接する人たちに対する配慮なのかもしれないが、ストーリーの流れが悪く、興味が削がれてしまった。出演者たちは音楽とダンスが専門なので、演技力にはもとから期待していないが、その中で、窪田正孝、林遣都の二人の“本職”の役者の演技が光っていた。ファン向けのお祭り騒ぎの映画と割り切るべきだが、大金をかけた上質なミュージックビデオと思えば、かなり楽しめる。
【50点】
(原題「HiGH&LOW THE MOVIE」)
(日本/久保茂昭監督/EXILE、窪田正孝、林遣都、他)
(パフォーマンス度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年7月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。