ラオックス業績急降下から経営で学べる2つのこと

中国人観光客の爆買いの象徴的存在だったラオックスの業績が急降下しています。報道によれば、2016年12月期の連結業績見通しは売上高が従来予想より35%少ない650億円、営業利益は82%少ない12億5000万円となる見込みで、店舗数を増やしたことによる固定費増加も利益圧迫要因となるようです(写真はネットから)。

ラオックスの国内の売上は、足元ではさらに厳しくなっています今年4月が前年同月比26%減少、5月は44%減少、6月も49%減少と歯止めがかからない状態です。

その要因として報道されているのが、円高による訪日中国人観光客の減少と、購買物が高級品から日用品にシフトしたことによる客単価の低下です。宝飾品や時計などの売上が激減して、日用雑貨や化粧水、ファンデーションといった小物が増えているようです。炊飯器をまとめて買うといった人の数も減っているようです。平均購買単価も、昨年に比べると30%程度低下しているそうです。

このような業績の急低下を見て、思ったことは2つあります。

1つは、特定の顧客層に偏った仕事は業績のブレが大きくリスクが高いということです。外国人の中でも中国人の団体旅行客をターゲットに繁華街にお店を構えて、短時間で大量販売する手法は、効率的ではありますが、中国人の観光客が減ったり、団体客から個人ツアーに旅行形態が変化すれば通用しなくなります。また、他の外国人や、日本人客相手にして、顧客を分散させた方がリスクは抑えられます。

もう1つは、制度の歪みを利用したビジネスは長続きしないということです。中国人の爆買いは、商品を帰国して転売するブローカーが大量購入していたことも大きな要因です。個人輸入品が実質免税になっていたことで、国内との内外価格差を利用するビジネスとして成り立っていた訳です。しかし、中国政府がこれを国内消費の低迷原因とみなし、課税を強化することになって、税の歪みは無くなってうまみが消えました。

日本でも似たようなことがありました。相続税という税の歪みを利用してタワーマンションを節税商品として販売していたら、税率の見直しが検討され、タワマンブームは去ってしまいました。税の歪みは利用する人が多くなればなるほど修正されやすくなります。そこに依存したビジネスモデルが成立するということは、逆説的には、いつか成り立たなくなるということを意味します。

ラオックスの業績の激変は、企業の経営に大きなヒントを与えてくれると思います。それは経営においてはリスクを分散して、本質的な価値提供によって利益を上げなければ、企業の持続的成長は無いという極めて真っ当なことです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年8月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。