マスメディアが政治家の生殺与奪権を握った時代からの変化

音喜多 駿

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

先のブログでご報告したとおり、毎日新聞社が一部誤りを認め、おわびの記事と掲載する対応を行いました(追加で要請していたウェブ上での対応も済)。

こちらに関連して本日は改めて、「政治とメディア」論を書きたいと思います。

都知事選の最中、鳥越俊太郎候補(当時)の「淫行疑惑」が、週刊文春・新潮の両紙で大きく取り上げられました。鳥越俊太郎氏を庇うつもりはまったくないですし、説明責任を果たさない事後対応も最悪だとは思いますが、内容はあくまで「証言」に基づいたものでしかありませんでした。

こうした「不確かな事実」に対して、匿名の関係者の証言と「疑惑」という言葉さえ末尾にあれば、どれだけ強い言葉で・何でも書くことが許されるという状況は、さすがに不健全なように思えます。

しかも本ケースでは、選挙結果に深刻な影響を与える可能性もあったわけです(結果としては、この報道があってもなくても負けてたでしょうけども)。

つまり文字通りマスメディアが、政治家の「生殺与奪権」を握っている状況なわけですね。

ですがこうした記事を担保しているのは、上記の通りあくまで「関係者の証言」でしかありません。その存在や発言内容が、まったくの捏造である可能性も大いにあります。

実際に、元横浜市長・元衆議院議員の中田宏氏は、市長時代に「婚約者(愛人?)」を名乗る女性の証言を元に盛大にスキャンダル報道を仕掛けられましたが、後にそれはほぼすべて捏造であったことが裁判を通じて明らかになりました

中田宏を巡る裁判の背景と真相
http://nakada.net/special

しかもこの証言者を仕立てあげた人物が、当時の中田市長の政敵である「市議会のドン」だったというのですから驚きです。

長い時間をかけて訴訟・裁判で勝ったとしても、毀損されたイメージを回復することは困難です。「報じられたら負け」という状況が看過され続けてきたのが、今の政界とメディアにおける実情なのです。

なお、中田宏さんの件は、こちらの著作に詳しいです。すごいタイトルですよね、「政治家の殺し方」って…。

しかし、時代と状況は確実に変革の時を迎えています。そのきっかけは言うまでもなく、インターネットの発達と情報化社会の深化です。

これまでメディアの特権であった「情報発信する能力・権利」を、あまねくすべての個人が(もちろん政治家も!)持てるようになりました。

「いや今までも、疑惑をかけられたら記者会見をして、きちんとメディアに釈明できたじゃないか!」

という方もいますが、自分の言い分をすべてそのとおりに書いてくれるメディアなど存在しませんし、そもそも私のような無名な地方議員であれば、会見場に記者が集まらないでしょう(苦笑)。

それが今やホームページ上やブログで、自身の主張をそのまま世間に発信することが可能になりましたし、少数しか集まらなかったとしても記者会見さえ開けば、生中継してネットに流すこともできます。既存メディアが「切り貼り」をして、恣意的な情報のみを世間に流通させることは不可能です。

私も過日、週刊誌・新聞と連続してまさに典型的なスキャンダル(金銭と女性)について恣意的な報道をされましたが、ブログによる情報発信でダメージを最小限に抑えることができました(多分)。

さらにはそうした情報発信を、さらに検証するメディアが出てくるという循環まで生じています。これまで権力を「批判し、監視する」一方の立場であった既存メディアは、もはや自分たちが批判と監視に晒される立場になったのです。

私自身も注目をあびるようになってから、多くの方に「メディアには気をつけろ!」というアドバイスをいただきますが、匿名証言を元に「疑惑」という形で何でも報道されるようでは、ぶっちゃけ防ぎようがないんですよね…。

なので、私たち政治家サイドができる「自衛手段」があるとすれば、常日頃から情報発信をし、カウンターを打てる体勢を整えておくのが唯一にして最大の防御と言えるでしょう。

もちろんそれには、なんらやましいことがないというのが大前提です。

逆に言えば「疑惑」の報道が出た際に、自らの言葉で発信ができない政治家は、それだけで「言い返せないだけの、何かやましい事実があるのだ」という目を向けられることになります。まさに今回の都知事選挙で、鳥越俊太郎氏がそうであったように…

マスコミ・メディアは、自分たちもすでに批判や監視の対象であるという緊張感を。
政治家たちは、常日頃から有権者・メディアに対してオープンである努力を。

この相互の意識改革によって、少しずつメディアと政治家の関係性は少しずつ正常化していく。私はそのように信じています。

「出る杭は打たれる」典型的な世界ですが、しぶとく生き残っていきますよ!それでは、また明日。

twitter
Facebook
LINE