相場って何でしょうか?

相場。これを国語辞典で引くと、①市場で取引されるその時々の商品・株式・債券・外国為替などの値段。時価。市価、②実物・現物・直物取引ではなく、市場における価格変動によって生じる差額で利益を得ようとする投機的取引、③ある物事についての世間一般の考え方や評価。また、世間並みと認められる程度、と出てきます。(Goo国語辞典より)

この三つの意味をよくよく見なおしてみると多くの場合①の価格に向けて②の差益を得るために人々は③の評価、憶測を行う、とするともう少し、座りが良い気がしませんか?

相場にはいろいろあります。株式、為替、国債、商品など金融商品相場から生鮮品の取引価格、更には不動産、街中では商品券などのチケットショップの価格も相場で成り立っています。それを言ってしまえば、モノの値段は全部需要と供給の中で価格が決まっているのでこれも相場といえましょう。

では相場が上がる、下がるというのはどういうことなのでしょうか?市場への参加者が多ければ需要と供給による価格決定が支配しやすいでしょう。例えば携帯電話や自動車、洋服の価格は公明正大な競争の中で決まっていきます。ところが、市場参加者が小さいところになると需給だけではなく思惑や一部のインタレストが関与してきます。ちょっとした噂で価格がポンと跳ね上がることが多いのは市場規模が小さいからこそ起きるのであります。

例えばポケモンGOが話題になった時、任天堂の株価が瞬く間に2倍以上になりました。あの株価が暴騰している瞬間、人々は③の憶測に基づき、②の差益を求め、①の価格が設定されたのではないでしょうか?つまり、任天堂の株価を決めたのはそこに群がる人々が俺も、私もとバーゲンセールに群がるあのシーンのごとく、何でもよいからとにかくゲットしたいという集団心理が働いたと考えればすっきりします。

ホンダがスポーツカーNSXの新型を発売します。その価格2370万円。GTRが二台買えるこの価格設定は一部のインタレストの人のためであると同時にあまり注文が来ても受注に耐えられないから強めの価格設定にしたのだろうと推測します。これは市場から見るとあの車に乗っている人は超金持ちに違いない、という優越感を満たすと同時に価格が作り出す市場評価もありましょう。

通常、モノの価格は専門家、アナリストと称する人たちが分析をして「目標価格はこんなもの」と打ち出します。あるいは不動産なら金利動向や景気動向、地域特性などで長期的な上がる、下がるを判断します。ところがニュースが出たときには専門家の分析は間に合わず、往々して人々は勝手な憶測をし、相場を作るのであります。

相場とはアカデミックに論理的に引き出される場合もあるし、人間チックな感情むき出し粗削りな場合もあります。ここには人間の本能として「儲けたい」という気持ちを常に持ち合わせており、時としてそれが覚醒するとも言えましょう。

バンクーバーで8月から導入された外国人購入者向け15%の不動産取得税。ローカル紙には日々、是非論が掲載されています。そんな中、8月1-15日の地域ごとの取引件数がなんと前年同月比70%から90%減と崩落したことをローカル紙が大々的に伝えています。

これは外国人からすれば「欲しい」と思わせないと共に売り手からすれば「これはヤバいぞ」という③の憶測がマイナスに転じてしまっているからでしょう。だからと言って相場が直ぐに崩れることがないと思われるのは売り手がどうしても現金化しなくてはいけない理由がなく、「ここはいったん待つか」というスタンスに切り替える余裕があるからでしょう。

いわゆる相場が崩れるときの一例としてデベロッパーが新築物件が売れず、キャッシュが廻らないため安値放出するとか、倒産するといった時ですが、そういう状況が生じる気配は当面なく、相場の下支えをしています。

日米の株価が凪になっています。金曜日のジャクソンホールでのイエレン議長の講演待ちとされますが、期待禁物です。これは人々が③の憶測をするための材料がそこにあるだろうと注目しなくてはいけないほど株式市場にニュースが全くなく、どこに向かうか決められないのです。まるで浮浪する台風10号のようなものでしょう。

こういう時、ニュースに飢えた人々のリアクションは通常よりよりマグニチュードが大きくなりやすく、凪ゆえのボラティリティ急上昇のリスクとの背中合わせということになります。

私は相場とは人間の欲そのものだと思っています。その熱から醒めた時、より論理的価格に近付きます。相場に於いて「頭としっぽはくれてやれ」という格言があります。しかし、人間の貪欲さは美味しい身がもっとついていると思ってしまうところにはかなさがあるとも言えそうです。

「待つも相場」という格言もあります。皆が競い合っている時には「人の行く裏に道あり花の山」という冷静なスタンスがよろしいのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 8月26日付より

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。