ひどいねハフィントン・ポスト。病気で寝ている間に時が止まっていたのかと思って確認してしまったが、やはり最近の記事のようだ。
「日本法律家協会の機関紙が元最高裁判事の論文を不掲載 安保法制巡り安倍首相批判」(朝日新聞デジタル | 執筆者:朝日新聞社提供 投稿日: 2016年08月21日 18時44分 JST 更新: 2016年08月21日 18時44分 JST)
このタイトルでしかもこの墨塗りをイメージした写真だと、安倍政権批判したから論文が載らなかった、と勘違いする人がいるだろうし、下手するとこれまた欧米の数少ないあんまり日本語できない日本研究者などに「検閲進んでます」などとご注進に及ぶ人も出てきそうだけれど(学会の一部にはそういう人多い)けど、この論文は「安倍のやり方はそりゃ悪いよ」と書いた上で、「それを批判する憲法学者の議論は十分に学問的だったのかい?そうじゃないだろう?」と懇々と説く趣旨のものだった。だからこそ話題になって、批判された憲法学者たちがそれぞれに反論している。
日本法律家協会の『法の支配』が掲載を拒否して、結局『自治研究』2月号に載っており(「覚え書き-集団的自衛権の行使容認を巡る違憲論議について」)、その経緯はウェブ上で広く知られ、議論されている。それがなぜ半年後に、論文の趣旨と正反対のタイトルをつけて、流すのか、意味がさっぱりわからない。この記事がこのタイトルでこのタイミングで出た経緯をジャーナリストが調べて解明したら、日本のマスメディアの闇が浮かび上がるかもしれない。
日本法律家協会の側がどのような思惑でもって掲載を拒否したのかは知らないけれども、「法律家」の多数が付和雷同的に用いている論理を逐一批判されてしまったので掲載を拒否したのかな?と推測するのが普通だろう。「検閲」があるとしたらそれは政府によるものではなく、憲法学者たちのコミュニティの中の「検閲」だ。
もともとはハフィントン・ポストに出資している朝日新聞の記事だけれども、今見ると少なくとも現段階での朝日新聞のウェブサイトでは、違うタイトルになっている。
「安保法巡る元最高裁判事の論文、法律家の機関誌が不掲載」(藤田直央 2016年8月21日12時42分)
メディアの人のやることをあまり気にしないようにしようと思うが。しかし半年後に政府からの「検閲」を匂わせる写真とタイトルで論文の趣旨やその後の議論と正反対の記事を載せる媒体の記者のリテラシーには頭が痛くなる。
これも「8月ジャーナリズム」の成れの果てなのか。端的にデマなんですが。
編集部より:この記事は、池内恵氏のFacebook投稿 2016年8月26日の記事を転載させていただきました。転載を快諾された池内氏に御礼申し上げます。