日本の外食はなぜ「低コスト高品質」なのか?

外食をすることがほとんどという生活をしていますが、久しぶりに買い物をして、家でご飯を食べました。再認識したのは、日本の外食の割安感です。

チーズを買いに行ったお店で、久しぶりに高級食材(写真)まで衝動買いしてしまいましたが、そんな高級食材も、お店で食べた方がオトクではないかと 思ってしまう。それ位、日本の外食の割安感は際立っています。海外と比較しても、新興国はともかく、先進国の都市部で食事をすると東京の倍くらいかかるこ とも珍しくありません。なぜ、日本の外食は美味しくて低価格なのでしょうか。

まず、外食と内食(買ってきて食べる)を比較すると、お店の方が食材を大量に仕入れて、多品種を使うことができます。大家族ならともかく、1人や カップルで食事する場合は、たくさんのものを少しずつ食べることができません。同じものを食べようとすると、仕入れ価格も高く、割高になってしまいます。 家で食べるからと言って、それなりの食材を買えば、それほど安い訳では無いのです。

しかしそれだけで日本の飲食店の割安感を説明することはできません。海外での外食と比較して、自分なりの仮説を立ててみました。

飲食店の経営で経費を占めるのは、店舗の賃貸費用、材料費、そして働く人の人件費が3大コストになります。その中で日本が安いのは、賃料と人件費ではないかと思います。

賃料はともかく、人件費が安い理由として考えられるのは、飲食店が好きで、仕事をしたい人が多いからというのがあると思います。居酒屋やファスト フードのお店はアルバイトの人気が無く、人集めに苦労しているようです。しかし、高級レストラン、バーのようなスキルが要求され、将来独立も目指せるよう なクオリティが求められる仕事には、チャンスを求めてたくさんの若者が集まってきます。飲食店の仕事に高い需要があるので、他の業種に比べ給与が低くて も、人が集まるのです。

海外では、レストランで食事をするとチップを上乗せして支払う慣習があります。日本ではサービス料は無料か、会計時に10%程度自動的に上乗せされているのが普通ですが、海外では(国や都市によって違いがありますが)15%から25%程度が目安になっています。外食コストもその分高くなります。サー ビス料も取らず、最高のサービスを提供する日本の飲食店は「低コスト高品質」の食事ができる貴重な場所なのです。

家でのんびり好きなものを好きなだけ食べる食事も良いですが、世界最高水準の日本の外食の素晴らしさを、もっと味わわないと勿体ない気がしました。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年9月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。