日本で最も起業しているのは60歳以上…
図表: 起業希望者及び起業家の年齢別構成の推移
出展: 総務省「就業構造基本調査」
起業やベンチャーというと、多くの人がイメージするのはMicrosoftやGoogle、AppleなどといったIT系の企業を若くして創業する。といったイメージがあるのではないかと思う。
実際にシリコンバレーで平均年齢が30歳代だと言われる。これでも年齢は上がっていると言われており、一昔前にはこの平均年齢は20歳代だった。
ところがである。
日本における起業家の年齢を世代別に見ると、最も多いのが60歳以上で32.4%と1/3程もを占める。
多くの日本人のイメージとここまで異なるというのが今の日本の現状である。
もちろん高齢になってからの起業が良くないというわけではなく、大いに頑張ってもらいたいところではあるが、社会経験を積んでからの起業とそうでない場合とでは意味合いが異なるケースがある。
タイトルの通り、筆者は学生など若者の起業を増やそうという思惑である。
こうした提案をすると、それなりの割合で、「もう少し社会経験を積んでからの方が…」という指摘をもらう。
しかし、社会経験を積んでからの起業は、どちらかというと独立という色合いが強く、その場合、新しい産業や事業、サービスが生まれるというよりは、同じ事業の担い手が変わるという側面が強くなったりすることがある。
その意味でも、若くして起業することには、大きな意味があるのである。
中央大学では、起業家サークルを立ち上げ1年半で8社起業
中央大学で特任准教授に就任したこともあり、1年の春学期の段階で、企業から実際の課題をもらい課題解決を図るPBL(Project Based Learning=課題解決型学習と言われるアクティブラーニングによるグループワークプログラムを60人程度2クラス、120人程度に教えている。
こうした取り組みは、学生の成長に日樹に寄与することはもちろんであり、非常に大きな成果を出しているが、さらに実践的な経験を積ませていくため、中央大学では、このPBLプログラムである「ビジネスプロジェクト講座Ⅰ(通称:ビジプロ)」の上級プログラムとして、さらにベンチャーやスタートアップの起業を目指したビジネスプラン作成プログラムとして、「ビジネスプロジェクト講座Ⅱ(通称:ビジプロ2)」を設置した。
昨年は、電通の子会社のほか、ChatWork株式会社を始めいくつものベンチャー企業の社長、株式会社コロプラのVC(ベンチャーキャピタル)部門の担当者などを招いて、学生たちは自らのビジネスプランを磨いた。
中でも大学1年生の女子学生が提案したビジネスプランは、フィードバック訪れた経営者たちからも高く評価され、実際に起業資金となる100万円を個人で投資してもらい、起業。
初の授業からの起業となった。
一方で、半期15回の授業だけでは、実際に学生起業を乱立させるのは難しいため、中央大学の中では、自分が特任准教授の任期中に日本一のベンチャー大学になることを目指そうと、学生たちと「2年間で20社の学生企業の起業」を目標に掲げ、「中央大学起業家サークル( https://www.facebook.com/中央大学起業家サークル-434431583400523/ )」を立ち上げた。
慶応大学のKBCや東京大学のTNKの代表を招いてのシンポジウムや、起業家やシリコンバレーからの講師を招いての勉強会などを行い、学生たちは自らのビジネスプランを練り、フィードバックをもらいながら質を高め、起業をめざす。
実際にこの起業家サークルを立ち上げてから1年半で8社もの学生企業が起業し、今月9月4日からは、メンバーたちが、テレビ朝日系BSジャパンの「田村淳のBUSINESS BASIC」に出演。
9週連続で出演する予定だ。
単位の付く授業とサークル活動、さらにはこうした社会における活躍の場をうまく掛け合わせながら、実際に学生たちが起業していくためのエコシステムにしていこうと考えている。
授業から生まれた学生ベンチャーは、資金調達にも成功
昨年の中央大学で担当している先述の授業、「ビジプロ2」から生まれた「株式会社trimy(トリミー)」は、先月、メルカリ、ツイキャス、Gunosy、MERYなど国内外100社以上のベンチャーに投資しているイーストベンチャーズ株式会社からシリーズAで資金調達に成功した。
「株式会社trimy(トリミー)」は、「愛犬に優しいトリミングをあなたの自宅で」をモットーに行っているトリマーと飼い主をつなげるオンデマンドビジネスで、トリマーが自宅を訪問する「出張トリミング」という新しいビジネスの拡大をめざす。
将来の人材育成の側面からも、愛犬のいる方にはサービスをご利用頂いたり、ご紹介頂いたりと、是非ご支援いただければと思う。
株式会社trimy(出張トリミングサービス)
今回、こうして資金調達まで成功した企業が誕生したことで、中央大学の中で取り組んできたこうした学生起業の仕組みもさらにフェーズを上げていくことができる。
今年はさらに、中央大学から他大学も含めた枠組みへと、さらなる展開を考えていきたいと思っている。
学生起業への取り組みも含め、大学のあり方も変わっていくべき
今年は、こうした起業に対する取り組みや、私の授業を目的に、明治大学などを蹴って中央大学商学部に来たという学生が出てきた。
まだまだ少数ではあるが、学生の進学先を変えるだけになった事を非常に嬉しく思うとともに、大きな責任も感じている。
ただ、時代は少子化、経済の成長も限界が見えている中で、日本の大学は、まさに転換期を迎えている。
こと学生の起業と言うと、ほぼ慶応の一人勝ちの感さえある。
大学初のベンチャーも研究室などで起業する東大に比べると、他の大学は目劣りする。
一方で日本の行き詰まった経済にとっては、新規産業の創設なども含め、時代はイノベーションを求めている。
企業が長く続き、大手企業が支えてきた日本経済も大きな転換期を迎えており、新たな企業の参入や、何よりこれからの時代を創っていくための人材の共有が必要になる。
こうした視点から考えれば、他の多くの大学においても、こうした学生の起業に重点を置いた取り組みも重要性を増していくのではないかと思うのだ。
意欲のある大学や高校、高橋亮平に興味がある方は、オファーも是非。
いみじくも本日、フジテレビの「バイキング」に出演し、こうしたことについて、「学校で本当に起業するための授業を行なうべき!」などと題して提案する。
是非、こうした場なども活用しながら、幅広い層の方々に考えてもらえるキッカケにできればと思っている。
学生にとって二重三重に価値の高い起業経験。就活大逆転にも起業
こうした起業に対する経験は、学生にとってもその価値は高い。
中央大学起業家サークルでは、必ずしも起業した学生は就職活動や就職を諦めるということを薦めていない。
大手などを含めて就職することは、将来のことを考えれば、必ずしも悪いことはない。
仮に、将来的にまた起業することを考えていたとしても、そこでの社会経験が大きな財産になることや、新たなビジネスの可能性を広げることもあるからだ。
学生の中には、起業に向いている者もいれば、将来的には企業の中で活躍するという人材もいる。
しかし、仮に大手などに就職するとしても、最近では企業内ベンチャーなどの取り組みもあるほか、企業の中での新規事業の開発などにおいては、起業経験は大きな武器になる。
単純に学生の就活対策としても、最もウルトラC的な効果があるのが、起業だと言える。
一昔前の就活においては、海外への留学経験やインターン実績などが評価対象となったが、最近ではトップレベルの学生の争いになると、もはやこうした留学経験やインターン実績は、「そこはみんなやっているよね」といった状況で争わなければならない状況になる。
こうした状況の中で、東大・早慶と争っていくためには、MARCH以下では何らかの武器が必要になるわけだ。
その点、「学生起業」はまだまだ大きな効果がある。
東大早慶がこれまでの学生時代の実績を語り狸奴している状況の中でも、「学生時代に起業して、事業を運営していました」などと話を始めると、一瞬にして周りの目が変わる。
それぐらいに「学生時代の起業」には大きな価値があるのだ。
実際に起業した中央大学起業家サークルの幹部たちは、リクルート、ソニー、DeNA、ソフトバンク、サイバーエージェント・・・
この2年の間にも中大生としては極めて異例の内定をしかも超多数抑えて来る。
もちろん実際に就職する者もいれば、むしろ起業に勝負をかける学生もいる。
ただこうした学生たちの目覚ましい成長を見ていると、それだけでも価値があるように感じる。
筆者自身の経験からも、「学びのための学び」よりも「実践の中で必要に迫られた学び」の方が効果が高いと感じているからでもある。
学生起業は、その9割以上が失敗すると言われている。しかし一方で、ソフトバンクの孫正義さんをはじめ、パソナの南部靖之さん、ホリエモンこと堀江貴文さんなど成功している起業家の中には学生時代に起業して経験がある人も多い。
スティーブ・ジョブズがAppleを創業したのが21歳。
ビル・ゲイツがMicrosoftを創業し、マーク・ザッカーバーグがFacebookを創業したのは19歳だ。
経済はもちろんだが、未来に向けて社会を創っていける人材を養成することは、この国にとっても非常に重要な課題である。
高橋亮平(たかはし・りょうへい)
中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。
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