世の中には不思議なことがいろいろありますが身近な疑問の一つになぜ、北朝鮮はまだ存続しているのか、なぜ、金正恩氏はあれだけの横暴を続けることができるのか、であります。
直近のニュースによると副首相を処刑、その理由はどうも見せしめのようだったというのですが、彼には人の命は虫けら以下、ましてや副首相、あるいは叔父の張成沢氏といった身近な人間だからこそ、見せつけの恐怖政治を極めることができるのかもしれません。もはや、多少の忠誠心では収まらず、命を懸けて金体制を支持しなくてはいつ処刑されるかわからない事態とも言えるでしょう。
北朝鮮には出身成分という身分仕訳が全国民に対して行われているとされます。まず、大まかに「核心階層」「動揺階層」「敵対階層」という三つの分類があり、それぞれにサブカテゴリーとして13,27,11種あり、合計51種の分類となります。敵対階層の多くは「日帝」の関連者、親日、親米、キリスト教、仏教、哲学者、富裕地主といった人たちがあげられるそうです。また、平壌には主に核心階層のみ居住を許されるともされ、どこまで真実かわかりませんが、同国には少なくとも金三代において国民を牛耳るシステムを作り上げているとも言えます。
また、朝鮮労働党の組織指導部は一種の党員を把握する人事部のようなものでここで作成される人事記録が悪化すれば格下げ、炭鉱送り、処刑といった罰が待ち構えます。全党員と勤労者が参加する土曜日午前10時の「生活総和」は自己批判をしあう会でありますが、参加者は好き嫌いにかかわらず自己批判を通じて組織に把握される仕組みが出来上がっているとも言えます。
こう見てくると流れとしては中国の文化大革命の時と非常に似ています。当時は毛沢東主席が作り上げようとする革命国家に対して紅衛兵が国の隅々まで回り、革命分子を見つけては、自己批判させ、祭り上げ、街中を引きずり廻し、資産を強奪し、命を奪っていきました。あの頃の中国に世界は誰も手を付けられない状態でありました。まさに傍観であります。
が、文化大革命は割とあっさり崩壊しました。一つは四人組の不正、分裂、崩壊、そしてもう一つは毛氏の死去であります。特に四人組の崩壊については結局、それぞれの野心が国民の不信を買い、毛氏の信頼を失ったこともあるでしょう。四人組の一人、江青は毛氏のワイフでありましたが様々な図書を読む限り、このワイフの性格は酷く、悪女そのものでありました。
現代において北朝鮮が文化大革命とかなり似た状態で国家運営されている事態を見る限りにおいて長くは続かないだろうという予想はあります。ただ、どれぐらい持つのか、という点になるとこれは何ら根拠がなくなってしまいます。1年かもしれないし10年かもしれません。確実に言えることは金正恩氏に権力が集中している限りに於いて彼が末端まで掌握し、コントロールできる体制を維持できれば「基本的国家生命力」はある程度維持できます。
次いで、彼が諸外国との外交を行うにあたり、現在のように敵を作る一方であれば彼は国防を更に強化し、国民に緊張感を与え続けなくていけない一定の「成長」が求められます。
父の金正日氏の時は中国なりロシアなりのサポートがあり、外交的味方がいました。あるいは金正日氏の時代に飢饉があった際にも中国をはじめ日本も食糧支援をするなど基本的国家生命力の維持には人権的見地から手を差し伸べたのであります。それは金正日氏は金正恩氏ほど無謀な敵対外交をしませんでしたし、中国とのコミュニケーションもとっていました。
今の北朝鮮は外国からのサポートはないに等しいといっても過言ではありません。つまり、宣言こそしていませんが緊急事態がずっと続いているようなものでありましょう。国民の疲弊にも限界があります。国外脱出もあるでしょう。外交官からレストランで働く給仕まで脱出を試みるのは当然の成り行きであります。
諸外国はこの事態をじっと見守るしかないのでしょうか?体制という名のもので多くの民が虫けらのように殺害されたり生命の危機に陥れられているのに国連も何処も強制力が使えないのか、使わないのか、譲り合いなのか、火の粉を被りたくないのか、実に悩ましい状態だと言えそうです。
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 9月5日付より