若者ってなんで公務員になりたがるの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、大学1~2年生を対象とした就職志望調査において、地方公務員&国家公務員が鮮やかなワンツーフィニッシュを飾るという衝撃の結果が話題となりました(ちなみに2年連続!)。トップ10には他にもANAやJAL、東西JRがランキング入りするなど、公務員とインフラ系が上位を固めるディフェンシブな様相となっています。

要するに、これから社会に出ていくなら公務員かインフラ系がいい!って考えてる若者が多いってことですね。そういう業界に今から入ってこの先どういう良いことがあるのか筆者にはさっぱり分かりませんけど、とりあえず安定はしているでしょう。そういう意味では彼ら若者が下方リスクに対して敏感になっているのは事実でしょう。

ただし、それを若者の草食化と切って捨てるのはやや早計でしょう。こうした現象の背後には、もっと根深い構造的な問題があるものです。

実は意外と合理的な学生の選択

今から4、50年ほど前、高度成長期と呼ばれる時代がこの国にありました。経済成長率が平均すると年10%近くあり、ちょうど今の中国みたいな時代です。80年代になるとだいぶ落ち着きますが、平成バブル崩壊の90年頃までは基本、成長の時代と言っていいでしょう。

成長の時代では、当たり前ですけどリスクの心配よりもリターンの追求の方が大事です。投資なんてやってないよという人でも自分の人生を“就職”という形で投資したはず。もちろんその投資先は、ボーナスや昇給という形でよりリターンを上乗せされやすい民間企業が中心でした。

筆者も記憶がありますが、90年代に入ってもとにかく官は人気が無くて、防〇大願書取りに行って、でも受験の場所が遠いからどうしようか迷ってたら「朝一でジープ回しましょうか」とか言われるくらい手の込んだサービスしてくれたものですね。

さて、そんな幸運な時代も90年代半ばには終わりました。多くの識者が予測するように、これからの日本はゼロ成長に近く、リターンを継続的に上げるのはなかなか難しい時代となっています。こうなると普通の人材にとってはリスク回避の方が重要なわけです。

大企業に入ってもリストラされたり倒産したり外資に買収されたりする時代。ばりばり滅私奉公させられても、課長ポストすら過半数の人間が貰えない時代……

そういう諸々のリスクを考慮すると、相対的にそうしたリスクの少ない官やインフラ系に目が向くのは、筆者はある意味、合理的で堅実だと思います。「若いうちはもっとリスク取って勝負しろ!」みたいな人もいますけど、そういう会社って新卒カード使わないと入れませんしね。

というわけで、昭和の大先輩方と現在の学生の皆さん、一見すると真逆の志向に見えるかもしれませんけど、変わったのは環境的な部分であって「空気を読む」という性質はまったく変わってないだろうというのが筆者の意見です。たぶん50年ほど昔から団塊世代をタイムマシンで現在に連れてきて就活させても、さっさと公務員とかJRあたりに就職するでしょう。

なんて書くと「いやいや、ワシはいまどきの新人ちゃんみたいなヘタレじゃないぞ!」って思う人も多いでしょうね。でも筆者は仕事柄、普段は数多くの「ヘタレではないはずの上の世代の方々」と付き合ってますけど、いやあ、ヘタレだらけですよ(笑)

たとえばこんなオッサン、ちょっと歴史ある組織には掃いて捨てるほどいてますね。

「解雇規制緩和には断固反対」
(意訳)=そんなん導入されたら自分なんて真っ先にクビ切られるじゃん

「ホワイトカラーエグゼンプション導入には断固反対」
(意訳)=成果なんて上げる自信ないからこれまで通り残業代でチビチビ稼がして

政府がアベノミクス第三の矢(労働市場改革等の構造改革)を一向に放てずグダグダ化してるのは、要はいい年こいた大人の過半数がヘタレなので選挙対策上動くに動けないということです。社会経験豊富なはずのオッサン連中が「リスクとったら負けだ、自分だけはなんとか逃げ切りたい」と安全地帯にしがみついている姿を見れば、そりゃ二十歳前後の若造もリスク回避に重きを置くってもんでしょう。

以降、
公務員人気の本当の問題=誰も仕事の中身を想像できていないこと
いかにして肉食系の人材を増やすか

※詳細はメルマガにて(夜間飛行)


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2016年9月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。