【映画評】キング・オブ・エジプト

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神と人間が共存する古代エジプト。天空の神・ホルスから王座を奪った砂漠の神・セトは、残虐な暴君と化し国民を苦しめていた。盗賊の青年ベックは、セトの神殿に忍び込んで輝く球体の物質を盗み出す。それはホルスが再び王となるために必要なアイテム“神の眼”だった。それを機にベックの美しい恋人ザヤがセトによって囚われてしまう。ホルスは王座を奪い返すべく、セトが待ち受けるピラミッドからもうひとつの神の眼を盗み出すため、ベックと組んで数々の試練と冒険に身を投じていく…。

エジプト神話をベースにしたアクション・アドベンチャー「キング・オブ・エジプト」。神と人間が共存する世界というとギリシャ神話を思い出すが、何しろこちらは舞台がエジプト。映画全体がツタンカーメンの黄金のマスクのように、色鮮やかで金色に輝き、無駄に派手である。面白いのは、神と人間はほとんど同じ姿だが、サイズが神が人間より少しだけ大きいという設定。この“少し”というのがミソで、特殊能力はあるものの、嫉妬したり愛し合ったり憎んだりと、神様たちは人間以上に人間臭いのだ。宇宙を司る太陽神ラーの二人の息子の格差が、兄弟の性格に如実に現れ、嫉妬や裏切りに発展していく…というのが元凶なのだが、物語は、知恵の神や愛の女神ら、多くの神を巻き込みながら、大蛇を操る戦いの女神とのバトルや、宇宙や死後の世界に行くなど、節操のない大冒険が繰り広げられる。

盗賊ベックと神ホルスを演じる二人にいまひとつスターのオーラが欠けているのが残念。その分、ド派手なVFXで勝負といったところだ。あまりにもなんでもありのエンタテインメントで何のために戦っているのが思わず忘れてしまいそうになるのだが、その中でも「300(スリーハンドレット)」のキャラをそのまま悪役にしたようなジェラルド・バトラーの悪役セトのムチャぶりだけは際立っていて、印象に残る。映像はほとんどキラキラの「聖闘士星矢(セイントセイヤ)」状態。もっとも、ド派手に輝く割には見終わって何も残らないところが、いっそサバサバして潔い。
【50点】
(原題「GODS OF EGYPT」)
(アメリカ/アレックス・プロヤス監督/ブレントン・スウェイツ、ニコライ・コスター=ワルドー、コートニー・イートン、他)
(キラキラ:★★★★☆)


編集部より:この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年9月9日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式サイトより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。