【映画評】四月は君の嘘

子どもの頃から天才ピアニストと呼ばれた有馬公生は、母親が他界してからピアノが弾けなくなってしまう。高校2年生になった4月、公生はヴァイオリニストの宮園かをりと出会う。自由奔放な性格と同じく、楽譜にとらわれない豊かで自由なかをりの演奏に触れたことをきっかけに、公生はピアノと“母との思い出”に再び向き合い始める。一方、かをりは、ある大きな秘密を抱えていた…。

新川直司による人気コミックを実写映画化した青春ラブストーリー「四月は君の嘘」。長い原作をコンパクトにまとめた映画版は、音楽ドラマのテイストは薄くなったが、ラブストーリーとして切なさを全面にだした青春映画になった。今、最も旬の若手女優の広瀬すずが、自由奔放なかをりを楽しげに演じている。かをりが抱える秘密と彼女がついたたった一つの切なすぎる嘘は、映画を見て確かめてほしい。ただ、彼女の秘密を多くの原作ファンは知りながら見ることになるが、あまりに“元気いっぱい”なので、苦笑するだろう。

監督の新城毅彦は、「潔く柔く」など、切ない系の恋愛映画を得意としているので、学園もののテッパンともいえる、桜並木や海辺でのデートなど、みずみずしい演出を施している。ただ、「音楽が自由なの」との心に残るセリフに象徴されるように、劇中に演奏される音楽の多彩な魅力を思うと、音楽、あるいは演奏家としての情熱に焦点を絞ったドラマも見てみたかった気もする。
【60点】
(原題「四月は君の嘘」)
(日本/新城毅彦監督/広瀬すず、山崎賢人、石井杏奈、他)
(切なさ度:★★★★☆)


編集部より:この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年9月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。