ロンドンの児童養護施設で暮らす10歳の少女ソフィーは、好奇心旺盛で勝気な女の子。ひとりぼっちの彼女が、ある日、真夜中に窓から外を眺めていると、身長約7メートルの巨人が現れた。巨人と目があったソフィーは、大きな手で持ち上げられ、あっという間に巨人の国へと連れ去られてしまう。食べられてしまうのでは…とおびえるソフィーだったが、その巨人は、夜毎、子どもたちに夢を吹き込む仕事をしている、心優しい巨人・BFG(ビッグ・フレンドリー・ジャイアント)だった。次第に心を通わせていく二人だったが…。
「チャーリーとチョコレート工場」の作者として知られるロアルド・ダールの児童文学を映画化した「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」。近年、シリアスな作品が続いていたスティーヴン・スピルバーグが、「E.T.」のスタッフを再び集めて作り上げたファンタジー・アドベンチャーだ。家族向けというより子ども向けに作られたであろうこの映画は、わかりやすさと確信犯的単純構造が目に付く。
ひとりぼっちの少女が、これまた巨人の国では浮いた存在である孤独なBFGと仲良くなるのは異なる種の交流で、王道の展開。他の巨人が人間を食べて暴れまわるのを、人間にシンパシーを感じているBFGは良しとしていない。そこで二人がとった行動が、現実世界に戻って、英国女王に助けを求めて軍隊を出動させて悪い巨人をやっつけるという作戦だ。短絡的すぎやしないか? いきなり軍隊って…? と、ツッコミたくなるのだが、よく考えると英国女王がいる現実世界は、巨人の国同様、ソフィーが暮らしていた“現実”とは異なるもうひとつの世界なのだと解釈すれば、とりあえず腑に落ちる。
どこか民話のような素朴な世界観には親しみが持てるし、人間の眼をくらませるため、BFGがマントや身体を使って影絵のように“隠れ身の術(擬態化)”を披露する場面には、素直にワクワクした。勧善懲悪のシンプルなストーリーで子どもを楽しませ、潤沢な資金と最先端のテクノロジーで、ファンタジーの世界を贅沢に構築する。この余裕こそが、巨匠の懐の深さかもしれない。
【55点】
(原題「THE BFG」)
(アメリカ/スティーヴン・スピルバーグ監督/マーク・ライランス、ルビー・バーンヒル、レベッカ・ホール、他)
(ファンタジー度:★★★★☆)
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年9月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。