画像は城村が手がけた『「美人寿命」が延びる』
「出版は個人のIPO(上場)だ」。著者の方であれば耳にしたことがあるフレーズだろう。詳しくはアゴラ新田編集長「出版は個人のIPOってホントなの?」を参照のほど。
■出版業界の現状について
現実的な問題として国内における書籍と雑誌の販売額は年々減少傾向にある。市場のピークが1996年(20年前)の2兆6563億円で、昨年度は1兆5200億円程度なので、ピークの約6割に落ち込んだことがわかる。
しかし、出版不況といわれながらも出版には根強い人気がある。ビジネス書は、自己啓発、経営、マーケティングなど、分野は幅広く多岐に渡るが、普通のサラリーマンや主婦の書いたビジネス書がベストセラーになるなど、ビジネス書のもつプレゼンスの高さが注目されているのである。
昨今では、そのフィールドはかなり拡大している。私の知り合いで就業規則が副業禁止であることからペンネームで上梓したところ、ベストセラーになり何冊も出している著者かいる。彼らは仕事を辞めて著者や講師として飯を食っていくことができるだろう。「出版は個人のIPO(上場)」という表現は業界を態様しているのである。
今回は、角川学芸出版のフォレスタシリーズの創設に携わり、書籍編集者として活躍している、城村典子氏(Jディスカヴァー代表取締役)に著者になるためのヒントを伺う。
■ビジネス書は情報を入手する最適なツール
――いまの出版市場の環境をどのように考えますか。
城村典子(以下、城村) 「ビジネス書には実践的なお役立ち情報が詰め込まれています。読むことで知識は増え価格も手頃なのでビジネスパーソンにとっては指南書になりやすいのだと思います。読者もビジネスパーソンですから本の内容を自分なりに解釈しイメージしやすいのでしょう。ビジネス書は無名の人が自分のビジネスを飛躍させるために出版することもあります。デジタル化が進んだいまでも出版することの意義は非常に大きいのではないでしょうか。」
――著書はセミナーや講演、お客様を訪問する際に渡すことが可能である。著書で自らの信頼を高め出版を機会にして自らのブランディング高める著者多い。
また、ビジネスパーソンであれば、自らの体験や知識が、誰かの役に立つこともある。自分の「得意」は、誰かの「苦手」でもあり、そのエッセンスが大いに役立つことがある。弁護士であれば「文章のみでの伝え方」は秀逸だろうし、アパレルの販売員であれば「好印象を与えるファッション」については熟知しているだろう。片付けや、パンを焼くこと、捨てることも、ある意味では技術であり、それを欲している人がいるということである。
■著者になるためには何が必要か
――最近のトピックがあれば教えてください。
「最近手がけた、『「美人寿命」が延びる』(みらいパブリッシング)という本があります。著者はバランスが悪く太った体型とニキビに悩んだことをきっかけに、美容のプロになることを志します。自身も食事療法で、14キロの減量を実現し26歳で世界32カ国から成るエステティック国際委員会(シデスコ)のインターナショナルライセンスを取得。現在は、独自のシステムを使ったカウンセリング、コーチングなどをおこなっています。」(城村)
「ダイエットやコーチングの本は世の中に溢れていますので、普通の切り口であれば出版には至らなかったかも知れません。そこに、自分のストーリーを加えて紐付けることで、より内容が具体的になり読者の共感を得ることができるのです。」(同)
――企画に落とす際には、自分自身のたな卸しが必要になる。今までの人生経験の強みや弱みなど、様々な出来事を精査する必要性がある。しかし自分でたな卸しをして卓越した企画を構想することは容易ではない。
さらに、「自分自身が考えている強み」は客観性にとぼしいので、他者と一線を画するほどのオリジナリティに溢れていることは少ない。編集者などのパートナーを見つけて充分に戦略を練ることも必要だろう。
尾藤克之
コラムニスト
PS
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