【映画評】闇金ウシジマくん Part3

渡 まち子


派遣の仕事で食いつなぐフリーターの沢村真司は、ひと目ぼれしたモデルのりなが求める理想の男になりたくて“ネットで秒速1億円を稼ぐ”というネット長者の天生翔の広告につられ、人生の一発逆転を狙って無料セミナーに参加するが、情報商材ビジネスの泥沼にハマっていく。一方、大企業のサラリーマンの加茂守は、妻帯者でありながら、不倫とキャバクラ通いを繰り返し、目下の目標は美人のキャバ嬢・花蓮を落とすこと。欲にまみれて闇金を訪れた挙句、転落していく人々の前に、法外な金利で金を貸す闇金、カウカウファイナンスの社長・ウシジマが立ちはだかる…。

非合法な金利で金を貸し付ける金融屋・ウシジマが、金に踊らされる人々の転落を冷酷な目で見つめる人気シリーズの劇場版第3弾「闇金ウシジマくん Part3」は、真鍋昌平による原作コミックの「フリーエージェントくん編」「中年会社員くん編」がベースになっている。うさんくさい情報商材ビジネスに金をつぎ込む若者と、遊ぶ金欲しさに借金を重ねるサラリーマンの2つの物語だ。

10日で5割(トゴ)という法外な金利で金を貸す闇金業者・ウシジマくんこと丑嶋馨は、冷酷でありながら、常に1本筋が通っており、彼が追い詰めていく金欲にまみれた人々の転落を通して、現代の日本社会の病巣が浮かび上がる。過去、映画化されたエピソードでは、ウシジマに金を借りた人々はとことん堕ちていくが、今回、ネットビジネスのマネーゲームに巻き込まれた若者・真司のエピソードは、予想外の展開をみせるのが興味深い。負け犬人生からの脱却を目指し、怪しげなビジネスにのめり込むのは確かに浅はかだ。家族や友人、罪のない人までも踏みつけにし、人をだましてつかんだ一時的な成功は、いかにも危うく、真司の転落は容易に予想できる。

だが映画は、夢を見るのが難しい時代に生きる若者の目を、最後に開かせ、ささやかだが意味のある希望を与えているのだ。遊ぶ金欲しさに愚行を繰り返す中年サラリーマンの加茂のみじめな運命と対照的なのは、未来の日本を担う若者への期待を込めているのだろう。より深読みするとしたら、ネットやSNSが当たり前のデジタル社会を生きるイマドキの若者が、金に踊らされながらも、どこか他人事のように自分をみつめる、冷めた客観性を持っているからこそ、最後の最後に自分を見失わずにすんだとも考えられる。主人公を演じる山田孝之、情報屋の綾野剛ら、レギュラーメンバーが続投。主人公であるウシジマの登場が少ないのは残念だが、続けて公開されるThe Finalへのウォーミングアップというところだ。
【60点】
(原題「闇金ウシジマくん Part3」)
(日本/山口雅俊監督/山田孝之、綾野剛、本郷奏多、他)
(転落度:★★☆☆☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年9月24日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページより引用)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。