都議会議員の「実力」はデータで全て分かるのか? --- 両角 みのる

寄稿

「データで見る都議会全議員の実力。質問ゼロ議員も!」(高橋亮平)
https://agora-web.jp/archives/2021559.html

高橋亮平氏記事では、2013年第3回定例会から2016年第2回定例会までを対象期間として、東京都議会の本会議で行われる質問(代表質問、一般質問)の回数と質問個数を会派別、個人別にランキングしている。

記事中、私は代表質問を1回のみ行い、一般質問をしていないとなっているが、まず、

この点、事実と反することを指摘しておきたい。

実際には代表質問は1回もしておらず、一般質問は3回行っている(平成25年第3回定例会、平成26年第4回定例会、平成27年第3回定例会)。

この部分については、明らかに事実と反することなので訂正を求めるものである。同時に、この数字を反映する、かがやけTokyoの質問総回数を含め他のデータについても再度精査が必要と考える。

では、なぜ、このような間違った数字が掲載されてしまったのだろうか?

都議会の質問の仕組みの不理解に起因しているように思えるので、以下、簡単に都議会の質問のシステムについてお話をしておきたい。

東京都議会では、ほぼすべての事柄が会派人数による案分で決められている。委員会に輩出できる委員数、質問できる総時間数、さらには海外視察に参加できる員数までである(舛添辞任騒動の時の都議会リオ五輪視察を思い出していただきたい)。

地方議会は、それぞれが独自に議会運営のルールを定めているが、ほぼ全てが機械的に会派人数で決められている点において、東京都議会は大会派に有利な、そして、数がものを言う世界である。

まず、本会議の質問時間は、会期ごとの質問日程(通常は2日間)から総質問時間を割り出し、これを人数案分で各会派に割り当てる。

例えば、これから始まる都議会第3回定例会では、自民党170分、公明党65分、共産党48分、都議会民進党40分、民進党都議団11分、生活者ネット9分、かがやけTokyo8分が本会議における質問持ち時間として確定している。なお、無会派議員は、任期中に毎年1回、自分の望む定例会で質問することができる(概ね13分程度)。

この会派ごとの総質問時間をどう使うかは各会派の自由である。通常、代表質問ができる会派は相当の時間をこちらに割き(自民党で1時間程度、公明党で30分程度が多い)、残りの持ち時間を一般質問用に会派メンバーに振り分ける(概ね、11~12分程度/1人が多い)。

そして、都議会本会議における代表質問、一般質問は、定例会ごとに質問日初日が代表質問、2日目が一般質問となる。

しかし、代表質問は、いわゆる交渉会派(会派構成員が5人以上)でないとできないこととなっており、今期(2013年7月からの第19期議会)は、代表質問が行えるのは、都議会自民党、都議会公明党、共産党都議団、都議会民進党のみである。

各会派は割り当てられた貴重な質問時間をフルに活用し(通常、与えられた持ち時間を捨てることはない)、一般質問の1人あたりの質問時間も10分前後と概ね均質であるために、大会派ほど質問者数、質問回数、質問数ともに多くなり、員数の少ない会派になるに従い質問回数は減るのは自明のことである。

以上が都議会本会議における実際に行われている質問状況であるが、このことを念頭に高橋氏の示すデータに戻ってみよう。

例えば、「会派別質問回数データ」の箇所では、<代表質問>では民進党都議団や、

かがやけTokyo、都議会生活者ネットワークもランキングされているが、代表質問権のないこれら会派をソートするのは誤っている。

<代表質問 + 一般質問>データについても同様である。

また、<一般質問>の会派別質問数ランキングであるが、これも現行の都議会構成を見れば(自民党60人、公明党23人、共産党17人、都議会民進党14人等)、会派員数に比例した順位になるのは当然である。共産党の質問回数が都議会民進党より少ないとすれば、共産党が質問総持ち時間のなかで、代表質問によりウエイトを置いた時間配分をしているからではないか。

かがやけTokyoについては、そもそもデータそのものが誤っている。

個人別の質問回数についても、任期を通じて、ほぼ平均して一人当たり3~5回程度に落ち着くのではないだろうか。

我々の会派では、4年間の定例会16回を通じて、割り振られた質問時間を最大限に使い、できるだけ均等に質問機会を分担するようにしているが、他会派も基本的に考え方は同じだろうから、任期中の質問回数に有意な差が出ない一般質問数についてランキングする意味を感じない。

また、指標として質問の数が取り上げられているが、10~12分程度の一般質問で、どれだけ多数の質問(質問数)をしたかを競っても意味がない。

個人的には、何かを動かす切っ掛けをつくった質問や行政の問題点を明らかにした質問、説得力のある提言など質問の内容こそが問われると考える。

客観的な指標として数値を見るのであれば、例えば、私は昨年の決算分科会で146分を使い57問の質問を行ったが、時間に縛りが無く、一問一答で行われる委員会質疑などを対象に質問時間や質問数を見るのであれば、議会活動を測る1つの指標たり得るのではなかと考える。

委員会の事務事業質疑等、会派人員に比例した時間配分が採られていないパートでは、かがやけTokyoメンバーは、各委員会でひとりあたり質問時間はトップクラスではないだろうか。

さらに、都議会では「文書質問」という制度(国会の質問趣意書に相当)があり、私も含め、かがやけTokyoメンバーは一般質問の機会が無い時に積極的(今任期現時点までに3人で18回の文書質問を実施)に文書質問を行なっている。

こうした文書質問も、本会議での質問時間が豊富に割り当てられる大会派はほとんど活用しておらず、今期現時点までに、都議会自民党、都議会公明党の議員で文書質問を行った者は皆無である。

都議会を含めて、地方議会や地方議員が有権者の目に晒され、その活動が評価を受けることは大切なことである。そして、質問回数や質問時間は議員の議会活動を測る客観指標の1つではある。

しかし、正確なデータに基づき、当該地方議会の質問にかかるルールを踏まえ誤解を与えないようにアウトプット提示をしないと、一面的な印象と誤解を振りまくだけの結果となってしまうのではなかろうか。

これまで二元代表制の下にありながら、執行機関である長にのみスポットライトが当たり、税で運営されるもう一方の議会にはほとんど注目が集まってこなかった。

今、小池都政改革が耳目を集めるなかで、都議会も様々な面で注目を浴びているが、都議会を含め地方議会こそに注目をいただき、議会の権能が十分に発揮されているのか、議員はその役割を果たしているのか、住民目線のチェックをし、地方の政治、地方の行政そのものを改革・進化させていくべき時が来ている。

議員の活動は、質問以外にも議員提案や日常的な行政との関係を通じての政策の推進など多岐にわたる。また議員が所属する会派も大会派なればできることとそれに応じた行動様式や、小会派だからできること、やるべきことなど特性があるのも事実である。

そうしたことも踏まえて、より多面的に議会活動を評価できる方法を確立していくことが求められているのだと思う。

東京都議会議員(八王子市選出) かがやけTokyo幹事長
両角みのる