親孝行とは親の期待に応えることではない

中央が講演中の田中。

アゴラで出版事業を手掛けることをリリースしてから、書籍関連の記事を書く機会が非常に増えてきた。高円寺にポエムピースという出版社がある。今回のアゴラの出版事業展開に協力いただいている、城村典子氏(Jディスカヴァー)の知人である、マツザキヨシユキ氏が代表を務める会社だ。

マツザキヨシユキ氏は、これまで多くの出版社の経営にたずさわった経歴を持っている。ここ2年くらいの付き合いだが、また興味深い一冊が上梓された。『姫婚ノススメ』 (田中みっち/以下、田中)である。

■結婚率ではなく離婚率減少に目を向ける

日本は少子高齢化が年々進行し「人口の減少」に突入している。人口の減少に歯止めをかけなければ様々な悪影響を及ぼすと言われている。その打ち手として結婚率をアップさせることの必要性が論じられている。

いま注目されているのが結婚相談所(結婚情報サービス)である。結婚情報サービスとは、結婚希望者を会員として登録し、会員のデータを元にコンピュータを利用して結婚相手を紹介する業態のことを指す。

実際に、婚活市場が活性化しており、出会いの機会が増えていることも間違いない。しかし、晩婚化に一層の拍車が掛かっており初婚の高齢化も進んでいる。

また、日本では離婚率が4割近くにも及んでいる。厚労省「離婚に関する統計の概況」(平成21年度)によれば、離婚率はここ40年で2.5倍にまで上昇している。結婚率をアップさせても、離婚率が低下しなければ人口の減少に歯止めは掛からない。

今後、必要になることは、単なる相手探しだけではない。個の人生設計、キャリアプラン、夫婦の幸せなどを包括的に検討しなければいけないだろう。そのヒントのいくつかが本書には鏤められている。

田中は、2004年にカウンセラーとして活動を開始している。その主たるものが夫婦関係・恋愛関係の悩みだという。田中は、この問題について「人は人間同士で一番深い関わり合いを作ることに難しさを感じている」と述べている。

特に女性の視点から見た描写は興味深い。既婚の女性から聞こえてくる、「大変」「退屈」「遊びたい」「仕事に戻りたい」そんな嘆きが赤裸々に語られており、「結婚は牢屋である」「男とは扱いにくい生き物ではないか」という表現も、なかなか刺激的である。

「結婚しなきゃ世間体がよくない」「子供がいないと肩身が狭い」という気持ちとは相反して「結婚」という二文字に苦しくなり、途方にくれるママ世代の本音が語られている。

そのために、グチを吐いたり相談する相手が必要になる。田中は、母親のグチを聞くことを決めるのは自分の役割だとしている。父親の役目かも知れないし、母親の友達かも知れない。その関係性を作ってこなかった母親の責任があると。

これについては、「ママの子供のままで居たい」「褒められたい、認められたい」という子供の自分が浮き彫りになっていると。さらに、「子供のままで居たい自分」に気が付き向かい合う必要性があることを述べている。気持ちと意識を明確にした上で「たとえ、認めてもらえなくても、私は私を幸せにする」といった宣言と覚悟が必要になるそうだ。

■子供のままでいたい自分と向き合う

親孝行とは何だろうか、子供からすれば、親の喜ぶだろう人生を歩むことが、親孝行だと思っている人が多いことに気がつく。そのため、親が喜ぶ学校に入り、親が喜ぶ人と結婚をして、親が喜ぶ結婚生活を歩むようになる。この考え方に疑問を持つ人は少ないだろう。

しかし、過度的になると自分がなんのために生きているのかが分からなくなってしまう。だからこそ、「親孝行とは親の期待に応えること」ではなく「私自身が幸せになること」が大切である。また、田中は「成熟した夫婦の道を見つけることが最も大切です」とも述べている。「成熟した夫婦の道」を模索することが一つのヒントになるのかも知れない。

尾藤克之
コラムニスト

PS

次代の論客は貴方!アゴラ出版道場』は10月1日に開講します。