孤軍奮闘の小池体制は万全か?

岡本 裕明

夏の選挙の時、小池旋風は多くの都民の心を捉えました。メディアが有力候補と称するほかの二人を圧倒し、都民の黄色い声をモノにした小池さんの勝利の原動力は「クリーン」であったと思います。マスコミの力添えもあり、都議会のギトギトした部分が悪役扱いされたことも追い風でありました。

ただ、小池さんには弱点があります。それは方向転換できない暴走型である点でしょう。テレビに出ない日がない小池さんは今では露出度において風邪気味らしく元気のない安倍首相をはるかに凌駕しています。首相より注目されれば蓮舫さんのようにいつも白いジャケットともいかず、毎日の洋服選びも大変だろうと思いますが、それ以上に紋切り調の自己発言の重みがどんどん増し、フレキシビリティをなくしてきています。

私が懸念しているのは知事として着任わずか2か月のペースとしては無理がありすぎるということであります。この状態を続けるのは精神的にも肉体的にも不可能であります。

個人的には小池さんを応援しております。その中で期待の一つに知事としての長丁場をどう走りぬき、都政を改革していくのか、バランス感覚も重要だと思っています。小池さんへの期待は都政のヒロインというより前3都知事が途中退任している中、まずは任期を全うできる安定感、信頼感、そして着実な改善を進めていくことであります。

今回、やや奇異に感じたのは豊洲問題がまだこれからどうなるかわからない中でオリンピックの会場問題もバッサリと斬ってしまったところであります。疑問はそこまでやるほど小池さんのブレーンが存在するのか、であります。少なくとも議員レベルでは表立って同調できる人はいないでしょう。ということは自らのスタッフの一部ということになりますが、どこまで気を許し、任せられるのでしょうか?私ならまず信用しません。なぜなら彼らは公務員であり、最後は自分がかわいい人たちばかりで時の流れに身を任せやすくなるからです。

安倍首相があれほど精力的に動き回れるのは内閣や閣僚、ブレーンがごっそりいるからでしょう。毎夜毎夜、各界の人たちと会食をし、多い日では3度のディナーが入るときもしばしばです。これは人との付き合いを通じて自分の仲間と情報を集め、根回しをし、岩盤を動かしていく地道で目立たない努力をしているからです。

ところが小池さんは私から見れば今は裸の女王様。これでは味方どころか敵を加速度的に増やすばかりであります。

小池さんは問題点を明示し、公開することについては長けています。いまだわからないのはそれをどう解決させるかその能力であります。この手腕はいまだ未知であるといえましょう。が、小池さんの口調は勧善懲悪型なので解決策次第では「妥協した」と言われかねないリスク含みになります。では小池さんにも黄色い声で応援する都民にも完全に理解してもらえる満額回答があるかといえばそれはまずないでしょう。

今、都民の間に広がる期待とは「小池さんは妥協しないわ」でしょう。「豊洲は安全対策ができない限り移転しないわよね」もあるでしょう。ましてやオリンピック会場の問題となれば「そうよ、こんな数週間のイベントで多額の税金を使うならもっと私たちにも使ってよ」「森さんって本当に酷いわ、小池さんに頑張ってもらわないと」という女性目線の強いサポートになっていくのです。

この雰囲気が増長されると小池さんは本当のバトル時代を迎えることになり、三文週刊誌が喜ぶネタを大いに提供することになります。

私ならどうするか、ですが、豊洲に関しては問題だ、問題だというばかりではなく、どうやったら解決できるか、その道筋を示すべきです。来年○月には移転させる、そのために改善すべき点を掲げ全力でそちらに向かう対策を早く示すべきです。検査や試験という時間がかかるものに頼りすぎてはいけません。そこに答えがあるわけではなし、試験結果も答えにばらつきがあり、どこまで信頼できるのかという点もあるのです。

オリンピック会場についてはあれは半ば失言だと思っています。費用が最大3兆円かかるという調査レポートを鵜呑みにしすぎです。最大3兆円ならもともとの見積もりから増えた部分を検証し、2兆円に減らせないのか、その精査はしていないでしょう。思いつき発言と言われても致し方ありません。

私が小池さんのブレーンがいない、と懸念するのはそこなのです。一国家と同じぐらいの規模を誇る都政の運営において十分な検討がなされず、一部の報告や調査でそれを判断するのはあまりにも危険な暴走であります。

小池さんに求められるのは年単位の戦略であります。テレビ出演で言質を取られすぎず、もっと地に足を付けた落ち着いた都政が求められるでしょう。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 9月30日付より