米4~6月期GDP確報値は上方修正、企業の投資が下げ幅縮小

米4〜6月期国内総生産(GDP)確報値は前期比年率1.4%増と、市場予想の1.3%増を上回った。速報値の1.2%増、改定値の1.1%増からは上方修正。2015年10~12期の0.8%増(1.1%増から下方修正)も超え、3期ぶりに1%割れから解放された。

4〜6月期のGDPは前年同期比で1.3%増と、前期の1.6%増を下回り2014年1〜3月期以来で最低だった。なお2015年通期のGDPは2.4%増、2014年に続き2010年以来で最高を遂げた。

新車販売台数や小売売上高が好調だった一方、成長の7割を占める消費は4.3%増と改定値の4.4%増には届かず。速報値の4.2%増からは上方修正された。前期の1.5%増から上振れし、2014年10〜12月期以来の力強さをみせている。GDPの寄与度は改定値の2.94%から2.88%へ下方修正。もっとも、前期の1.11%ポイントを超え2014年10~12月期以来で最高を示す。

▽個人消費の内訳
・耐久財 9.8%増、2014年10〜12月期以来の高水準<改定値は9.9%増、速報値は8.4%増、前期は1.6%増
・非耐久財 5.7%増、2006年1~3月期以来の高水準=改定値は5.7%増、速報値の6.0%増、前期は2.1%増
・サービス 3.0%増、2014年10〜12月期以来の高水準<改定値は3.1%増、速報値は3.0%増、前期は1.9%増

民間投資は、上方修正が目立つ。企業の設備投資である機器投資が3期連続で減少しつつ、改定値から引き上げられた構築物投資も、大幅に上方修正。一方で、これまで成長を支えてきた住宅投資は改定値通り約2年ぶりにマイナスに転じ、2010年7〜9月期以来で最大の減少率だった。民間投資の寄与度はマイナス1.34%ポイントと、改定値の1.67%ポイントから下げ幅を縮小。もっとも、前期の0.56%から下げ幅を拡大した。3期連続でのマイナス寄与は2007年7〜9月期から2009年7〜9月期以来となる。

▽民間投資の内訳
・民間投資 7.9%減、3期連続で減少し>改定値は9.7%減、3期連続で減少し2009年4〜6月期以来で最低、速報値は9.7%減、前期は3.3%減
・固定投資 1.1%減、3期連続で減少し2009年4〜6月期以来で最低>改定値は2.5%減、速報値は3.2%減、前期は0.9%減
・非住宅(企業の設備投資) 1.0%増、3期ぶりに増加>改定値は0.9%減、速報値は2.2%減、前期は3.4%減で2009年7〜9月期以来で最低
>構築物投資 2.1%減>改定値は8.4%減、速報値は7.9%減、前期は0.1%増
>機器投資 2.9%減、3期連続で低下>改定値は3.7%減、速報値は3.5%減、前期は9.5%減と2009年1−3月期以来で最低
>無形資産 9.0%増>改定値は8.6%増、速報値は3.5%増、前期は3.7%増
・住宅投資 7.7%減、2010年7〜9月期以来で最低=改定値は7.7%減、速報値は6.1%減、前期は7.8%増

Q2GDPで、企業投資は底打ちの兆し。


(出所:MGSSI)

在庫投資が2011年7〜9月期以来初めて減少したものの改定値からは上方修正されたため、GDPへの寄与度はマイナス1.26%ポイントからマイナス1.16%へ引き上げられた。もっとも、5期連続のマイナスとなる。政府支出の寄与度は0.30%ポイントのマイナスとなり、改定値の0.27%ポイントから拡大、約1年半ぶりにマイナスを示す。一方で、純輸出の寄与度は上方修正され、2期連続でプラスだった。

▽その他
・純輸出の寄与度 0.18%ポイント>改定値は0.10%ポイント、速報値は0.23%ポイント、前期は0.1%ポイント
・在庫投資 95億ドル減、2011年7~9月期以来のマイナス>改定値は124億ドル減、速報値は81億ドル減、前期は407億ドル増

▽政府支出
・政府支出 1.7%減、2014年10〜12月期以来のマイナス<改定値は1.5%減、速報値は0.9%減、前期は1.6%増
・連邦政府 0.3%減、2期連続のマイナス<速報値の0.2%減、前期は1.5%減
(連邦政府は防衛支出が0.4%減で防衛関連が3.2%減と押し下げ、州政府・地方政府は2.5%減)

GDPデフレーターは前期比年率2.3%上昇し、市場予想並びに改定値と変わらなかった。原油先物の反発を支えに、前期の0.5%を大きく上回る水準を保つ。PCEデフレーターは、原油先物の回復を背景に前期の0.3%を上回り、改定値と同じく2.0%の上昇。コアPCEデフレーターは1.8%の上昇と市場予想並びに改定値に並んだ。前期の2.1%から、鈍化したままだ。2014年4―6月期の水準及びFOMCのインフレ目標値「2%」から再び遠ざかりつつある。

企業利益は前期比0.9%減と、速報値の1.2%減から上方修正された。前年同期比では4.3%減と、速報値の4.9%減から引き上げられた。企業利益(在庫価値、資本支出調整済み)で税引きの場合は前期比1.9%減と、前期の8.1%増から再びマイナスに落ち込んだ。前年同期比では、5.8%減となる。

▽米8月貿易赤字・速報値、予想・前月から改善

米8月貿易収支・速報値は584.02億ドルの赤字となり、市場予想の622億ドルを下回った。前月の587.76億ドル(593億ドルから修正)に続き、赤字を縮小。2015年8月以来の高水準だった6月の645.38億ドル(修正値)から、改善をたどる。輸出が前月比0.7%増(前年比0.7%増)の1246.07億ドル。輸入は同0.3%増(前年比2.7%減)の1830.08億ドルと輸出の増加幅が輸入を上回り、赤字が縮小した。

――米4〜6月期GDP確報値は設備投資を含む企業投資が下げ幅を縮小し、上方修正につながりました。さらに米8月貿易収支は予想以上に赤字を縮小させており、米7~9月期GDPが上半期から回復する機運が強まります。バークレイズは米7~9月期GDP見通しを2.5%増で維持するほか、JPモルガンに至っては従来の2.0%増から3.0%増へ上方修正。アトランタ連銀は米4~9月期GDP確報値発表前の28日に米7~9月期GDP予測を従来の2.9%増から2.8%増へ引き下げましたが、再び3%台へ修正してくる可能性を残します。

(カバー写真 : Thomas Hawk/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年9月30日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。