永田町はもう選挙モードで、来年初めの解散・総選挙と秋の自民党総裁選に向けて態勢づくりが始まった。民進党は蓮舫代表が死に体だから、最強の安倍=菅ラインが総選挙をやったら圧勝し、民進党は消滅するだろう。来年秋の総裁選が石破茂氏の最後のチャンスだろうが、客観情勢はきびしい。
民主党政権で国民が感じた疑問は、自民党以外の政党は政権与党になれないのではないかということだった。建て前上は官僚は政治に中立だから、政権がどう変わっても動くはずだが、政権が動かし方を知らないとどうにもならない。戦後ずっと自民党政権と共進化してきた官僚機構は、自民党にしかコントロールできない。
だから民主党政権のような形で、英米型の政権交代が起こることは二度とないだろう。あるとすれば90年代に小沢一郎氏が試み、2000年に加藤紘一氏が挫折した自民党の分裂で、政治的インフラを温存したまま「第二自民党」をつくるしかない。その意味では、次の総選挙で安倍首相が「勝ちすぎた」ときが石破氏のチャンスだと思う。
極端な話、自民党が400議席近くになったら「大政翼賛会」になり、ポストも不足するので党内に不満が貯まる。ただ加藤紘一氏のような個人的クーデタでは話にならないので、安倍首相の政策的な弱点を突く必要がある。今のところ彼の外交・防衛は満点に近く、石破氏もスタンスが似ているので、ここで差別化はしにくい。
勝負になるとすれば、経済政策だろう。日銀の黒田総裁は撤退を開始し、「アベノミクス」はもう死語になった。今や「爆発物」となった国債をどう管理するかが最大の経済問題だ。石破氏が野党時代の政調会長だったときのインタビューでは、彼は財政タカ派だったが社会保障改革には否定的だった。
ただ「平時」に緊縮財政で選挙に勝つのはむずかしい。石破氏に勝機があるとすれば、朝鮮半島の有事などで金利が暴騰し、財政の維持可能性が危なくなったときだろう。日本の政治のもっとも重要なアジェンダは憲法改正ではなく財政と社会保障であり、それに彼がどこまで踏み込んだ(実現可能な)改革案を出せるかが勝負だと思う。