人材支援の貢献で日本は賞賛されている

地中海を渡って欧州を目指す中東難民が問題化(UNHCRサイトより、編集部)

少し前になるが、9月30日の日本経済新聞の経済教室コラム「私見卓見」に良い記事が載った。駐日アフガニスタン大使 サイード・ファティミ氏の寄稿で、「日本の人材育成支援は平和に貢献」と書いている。

アフガニスタンはタリバン敗走後に大きく発展したが、国際社会の支援が復興から自立への道を歩むのに役立っており、特に日本の存在感が大きいという。日本のアフガニスタンへの援助金額は米国に次いで世界第2位。

しかも援助の透明性が高く、国の現実に即した支援を行い効率性が高い。規模以上に重要な役割を果たしている。

ファティミ氏によると、日本は1932年から日本人技術者の派遣とアフガニスタン人行政官受け入れを行っており、第2次世界大戦中も日本で学び続けた6人のうち1人が最高裁長官、もう1人が副首相としてアフガニスタンをリードしたという。

戦後も日本の国際協力機構(JICA)が人材育成面で大きく貢献。特に2011年に始まった未来への架け橋・中核人材育成プロジェクト(PEACE)では、、既に500人以上が来日して大学・大学院で学び、うち159人は母国に戻り日本での学びを生かして国家の発展に尽力しているという。

PEACE修了生は単に修士・博士号を得るだけでなく、日本の平和な社会や日本人のチームワークを学び、我が国政府の行政能力向上を主導している。こうした付加価値は他国の支援には見られない。ガニ大統領をはじめ我が国政府はこうした日本の援助に心から感謝している。日本は世界各地で今後も同様の人材育成を行い、世界の平和と安定に大きく貢献できると確信している。

最高級の賛辞である。日本人は心から誇ってよい。わが国は移民・難民の受け入れが少なく、世界に貢献していないとリベラル系の識者やメディアが批判して久しい。だが、今、欧州の移民・難民問題が大きなテーマになっており、英国のEU(欧州連合)離脱の背景にもなっている。

欧州各国はグローバルな移民受け入れに貢献しているようだが、内実を見ると、移民を3K(きつい、汚い、危険)職場に送り込み、自分たちは楽に暮らしたいというのがホンネという例が少なくない。

そして、予想以上に大量にやってくる移民・難民に雇用の場を奪われ、かつ言葉の壁や移民独自の文化を守った生活圏の構築が地元民との溝、あつれきを深め、社会的混乱を広げている。

移民たちも本当は貧しくとも自国で安定した、平和な生活を営めることを望んでいる。長い目で見た場合、途上国や新興国の人々が移民せずにも済むような社会を築けるよう、教育、産業技術開発などで支援した方がいいはずだ。

ファティミ・アフガニスタン大使の寄稿に見るように、日本は規模は小さいが、こうした貢献で世界各地で感謝されている。これを少しでも増やす努力をし、欧州など他の先進国も、日本と同様の貢献をすることを提案して行くべきだろう。

日本は現在の試みに自信を持ち、下手な移民・難民政策などとらないことが正しい道だ。もとより優れた外国人を受け入れ、日本に多彩な文化、技術が流入する努力は続けるべきである。