ジワリと増える外国人、そこに見えること

岡本 裕明

政府は「働き方改革実現会議」で、外国人労働者の受け入れについてさらに検討を進めることにしたようです。外国人労働者の話題は折に触れて出てきますが、この数年、その議論も進んできたと同時に都市部では外国人労働者を見ない日はないというぐらいごく当たり前の光景になっていることに日本の世論がどう変化しているのか気になるところです。

90年代、ブラジルなどに住む日系人に特別な就労ビザが発行されるようになりました。私もその申請の手伝いをして、あるブラジル人に日本で就労してもらったことがあります。その後、群馬や愛知などで加速度的に増えた日系人労働者は一つの社会を作り、専門店を作り、集まるところができました。その地に住む多くの日本人との軋轢ができたのもその頃であります。なぜ、軋轢ができたか、それは双方の問題で、考え方がまるで違う人間同士が言葉というコミュニケーション手段を持てなかったことが最大のトラブルの原因でしょう。

数年前から爆発的に増えた訪日外国人。政府は次の目標は3000万人だ、4000万人だ、と鼻息が荒いようですが、今までのペースで増えることはないでしょう。但し、代わりに増えてくるのが日本に長期滞在したいという若い外国人とみています。それは日本語を学びたいという人もいるでしょうし、日本で働いてみたい、という方も多いはずです。

私の経営する東京のシェアハウスもここにきて外国人の問い合わせが急増しており、部屋が足りなくなっています。その多くは長期滞在をして日本(語)を学んで、生活費を稼ぐ、というものです。何故、今、再び、日本なのでしょうか?

「ジャパン アズ ナンバー ワン」という本が発刊されたのが1979年。この頃から世界が日本を注目します。1981年に首相となったマレーシアのマハティール氏の「ルックイースト政策」というのもありました。これらはその10年後のバブル経済に向かう日本の成長を予知していたのでしょうか?案外、日本のことは外の人のほうが良くわかることもあります。ならば、今の外国人ブームは10年後の日本の好景気を予言したものかもしれません。

私は案外そうなのだろうと思っています。80年代の日本学習ブーム初期からすでに35年経っています。これは完全に一世代循環していますので「日はまた昇る」とすればちょうどよい時期なのかもしれません。

が、これはタイミングだけの問題ではないと思っています。個人的にはアメリカが生み出してきた社会的影響力の弱化や強者の理論が生み出す経営スタイルに対する反省が大いにあると思っています。それに対して日本の独特な文化、社会、経済は世界にはじわっと影響を与えてきました。

寿司、てんぷらから脱却し、ラーメン、居酒屋や日本酒に至る飲食文化はその一つ。先日もカナダで「最近日本のウィスキーが凄いらしいね。飲んでみたい」と言われ、何か買ってこようか?と言ったら「イチロー!」と言われ、それは無理、と丁寧にお断りしました。何度かバーで飲んだことがありますが、基本、手に入りません。以前私が飲んだイチローズ モルトは今、一本200万円で取引されていると飲み屋話を聞き、ちょっと耳を疑いましたが、それぐらいの価値があるということなのでしょう。

日本に来る外国人はそのような食文化、あるいはアニメといった理由でやってくるかもしれませんが、そこばかりに興味があるわけではありません。自然との調和であったり、日本人の工夫、新しいデザインなど西欧にはない新鮮味に興奮しているといった方がよいでしょう。それゆえ、1週間の滞在から1か月、6か月、さらには年単位の滞在と伸びてきています。

それを支えるのは日本の西欧化、生活水準の進化で欧米先進国の人たちが心地よく過ごせるインフラや環境が整ってきているという点があります。35年前はそういうわけにはいきませんでした。が、今は車内の英語のアナウンスも普通。わかりにくい地下鉄の乗り換えもどうにかこなせるようになっています。Suicaがあれば切符の値段を調べなくてもよいメリットもあります。

かつて外国人が隣に引っ越してきた、と大騒ぎしたのも時代と共に溶け込めるようになってきたことは事実です。私は多くの外国人が日本で様々な経験をして本国に持ち帰り、日本を紹介してもらいたいと思っています。これは日本を再認識するための基礎の中の基礎です。高齢化が進み、2020年のオリンピックが終わったらその後はどうなるのだろう、と不安を抱いている人も多いでしょう。

「日はまた昇る」と信じています。しかし、それは日本の許容力がなくしては成し遂げられません。人口が増えない今、外国人が生み出す経済力は無視できません。そして、彼らが本国で日本の宣伝をしてくれれば日本のものがもっと売れるような営業力となるでしょう。世の中、どれだけネットでつながっても口コミほどパワーのあるものもありません。私は今の外国人の日本ブーム、大いに期待しています。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 10月7日付より

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。