「ハドソン川の奇跡」に教えられた仕事との向き合い方

内藤 忍

クリント・イーストウッド監督の「ハドソン川の奇跡」を観ました。2009年1月15日に乗客155人を乗せたニューヨークラガーディア空港からシャーロット行きのUSエアウェイズ1549便が、ニューヨークのハドソン川に不時着水した事故の実話を元に映画化した作品です。

全員を無事に救出したことで英雄となった機長は、飛行場に戻らず不時着水した判断が間違っていたのではないかと、事故調査委員会で人為事故の可能性を指摘されます。その過程で、機長自身が自分の判断が間違っていたのかも知れないと葛藤する姿が描かれます。しかし、最後に力強くこう語るのです。

「われわれは自分の仕事をしただけだ」

この映画のメインテーマは、チームワークや家族愛といったものなのかもしれません。しかし、私には「後から後悔しない仕事を常に続けること」の大切さという気づきがあった作品でした。

仕事をしていると、自分のやっていることが評価されないことがあります。私自身も銀行員の頃、マネックス証券の頃、プライベートバンクの頃、そして資産デザイン研究所になってからも、良いと思ってやったことに対して想定しなかったような周囲からのリアクションがあって、難しい局面を迎えたことがありました。

周囲からネガティブな評価があると「自分の判断は果たして正しかったのだろうか」と心が揺れることがあります。そんな時にやるべきことは「本当にベストを尽くしたか」という自分への問いかけです。

仕事を後回しにした、100%全力でやらなかった、本当は良くないと思った方法を選択してしまった・・・そんな中途半端な仕事のやり方は、後から後悔をもたらすことがあります。でも、ベストを尽くしたという自分の確信があれば、評価がどうあれ受け入れることができます。ベストを尽くすことで納得感が得られるのです。

映画の中でも、主人公であるパイロットが、調査委員会のメンバーに執拗に問い詰めらた時、最後の拠り所は、自分の仕事をやったという自負と誇りにあったように見えました。実直に自分の仕事を手を抜かずに続けてきたことが、自分の自信となって最後には確信を持てるようになったのです。

そこまでの境地に立って仕事をすることができれば、例え周囲からの誤解があったとしても、自分のやったことに後悔は無くなります。誰でも楽をしたくなる時がありますが、そんな時こそ仕事との向き合い方の基本を忘れずに思い出すことが大切なのです。

アメリカの良心を感じることができる温かく、味わい深い作品でした。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年10月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。