【ファクトチェック】蓮舫代表。その演説の中身は本当?

選挙ドットコム

アメリカ大統領選が来月に迫り、民主党のクリントン候補、共和党のトランプ候補の激しい舌戦を日本でも報道で目にすることが増えてきました。アメリカでは報道機関や非営利団体によって、街頭演説などでなされた発言が事実かどうかをチェックして公表する「ファクトチェック」がトレンドとなっています。

一方日本では、特に街頭演説などでの発言についてその内容に誤りがあっても、よほどの失言がない限り追及されることはありません。

政治思想的な良し悪しを判断する前に、まず本当のことを言っているのかをフェアに判断するファクトチェックをアメリカにならってやってみたいと思います。

第一回は民進党の新代表として初めての国政選挙を戦っている蓮舫氏の東京10区での応援演説を取り上げます。

 

1.補正予算の内訳

補正予算の財源、安倍さんは自分の経済政策がうまくいった果実、税収増部分でしっかり対応してゆく(と言っている)。ところが3.2兆円規模の補正予算のうち税収増の純粋な財源はわずか2,500億円。2.8兆円は借金です。

【→正しい】
平成28年度補正予算(第2号)の歳入の内訳は

1.公債金(建設国債)2兆7,500億円
2.税外収入 2,844億円
3.前年度剰余金受入 2,525億円

合計3兆2,869円となっています。

 

2.貧困に関して

公共事業でいっときの雇用は生み出したでしょう。いっときの経済成長は生み出したでしょう。じゃあなんで今この国には貧困が広がっているんでしょうか。不安定雇用が広がっているんでしょうか。大学に行きたいのに借金に頼る子供が増えているんでしょうか。

【→正しい】
有効求人倍率はリーマンショックで落ち込んだ2009年以降、上昇を続けています。
第2次安倍政権に変わる直前の2011年以降、日本の名目GDPは一貫して伸び続けています。
日本における相対的貧困率は1980年代から上昇を続けています。
2014年の非正規雇用者数は1990年の2倍になっています。
18歳人口は横ばいですが、奨学金受給率は右肩上がりです。

 

3.人口に関して

人口が減る時代となりました。

【→正しい】
2015年の国勢調査で96年ぶりの人口減少が確認されました。今後の急激な人口増も予想されていません。

 

4.人口消滅可能性都市に関して

24年後、全国で3割の基礎自治体がなくなると言われ、東京では唯一豊島区が人口消滅可能性都市にカウントされている。

【→一部間違っている】
「日本創成会議」人口減少問題検討分科会が2014年に発表した2040年までに存続が困難となるとした894市区町村に東京23区では唯一豊島区が含まれている。この数字は全自治体の約5割となっています。

5.保育士の給与に関して

今の政権は箱(託児所、保育所)は作ろうとしているけど、どうして保育士の給料をあげることができないんでしょうか。

【→微妙】
政府は2014年に「待機児童解消加速化プラン」を発表して保育所の増設と保育士の待遇改善を掲げています。 また、安倍首相は「1億総活躍社会に関する国民会議」の中で来年度から保育士の給与を月額約6,000円引き上げる方針を掲げたが、低額なので「給料を上げる」とみなさない見方も可能。ただし、ベテラン保育士には月額4万円程度の引き上げの方針も示している。

6.高齢者介護に関して

今の政権は介護の車椅子、ベッドなどなくては生きていけない福祉用具を1〜2割負担から10割負担に引き上げることを検討している。

【→正しい】
2015年の「骨太の方針」には「高齢者の有する能力に応じ自立した生活を目指すという制度の趣旨や制度改正の施行状況を踏まえつつ、軽度者に対する生活援助サービス・福祉用具貸与等やその他の給付について、給付の見直しや地域支援事業への移行を含め検討を行う。」と明記されており、政府は2017年の法改正、2018年の実施を検討しています。

7.生活援助に関して

生活援助のお金も1割〜10割にカットする方向で厚労省内で検討が進んでいます。

【→補足説明が必要】
上記の通り、福祉用具と同様に骨太の方針に見直しの方針で進んでいたものの、社会保障審議会は当面は介護保険で継続することとしました。

8.年金に関して

この秋の国会で政府はどんなに物価が上がっても年金をカットする法案を出そうとしています。

【→正しい】

物価が上昇している時でも賃金が下がれば年金の額を減額する年金制度改革関連法案が提出されました。
以上のように蓮舫氏の演説は大げさな数字や誤った事実を含まず、正確なデータに基づくものであったと評価できます。

今回の記事では、蓮舫代表の発言の事実確認を行いました。
引き続き、他の政治家に関してもチェックしてご紹介する予定です。

※本記事は「選挙ドットコム」の10月22日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。