ベトナムとバチカン、外交接近

バチカン放送独語電子版は22日、「バチカンとベトナム、外交接近」というタイトルの記事を送信した。それによると、今月24日から3日間の日程で両国外交関係改善を目的とした第6回作業グループ会合がバチカンで開かれる。バチカンからは国務省外務局のAntoine Camilleri次官、越南からはBui Thanh Son外務次官らが参加する予定だ。

ベトナムとバチカン両国関係は、ベトナムで1975年、共産党政権(社会主義共和国)が樹立して以来、途絶えてきたが、前ローマ法王べネディクト16世が2007年1月25日、法王庁内でベトナムのグエン・タン・ズン首相(任期2006年6月~16年4月)と会談したことが契機となって、両国間の外交交流が動き出してきた。

バチカンは同年3月に入ると、法王庁外務局次長のピエトロ・パロリン司教(現国務長官、枢機卿)を団長とした使節団をハノイに派遣し、両国間の外交関係回復をめざし作業グループを設置し、交渉を重ねることで合意している。そのため、「両国の外交関係樹立か」といったニュースが過去何度も流れたが、今日まで実現していない。

ベトナムでは約800万人がローマ・カトリック教徒と推定され、ベトナムはフィリピン、韓国と共にアジアのカトリック国に入るが、バチカンとベトナムの両国関係は過去、険悪な関係だった。両国間には司教任命問題や聖職者数の制限問題などが山積していた。キリスト教会の活動は厳しく制限され、聖職者への迫害は絶えなかった。

その流れを変えたのは、同国のグエン・ミン・チェット国家主席(当時)が2006年10月、ベトナム司教協議会メンバーと会談し、国内の活動状況や国交問題について意見の交換をした頃だ。国営ベトナム通信によると、国家主席は当時、「共産党と政府は今後、国民の信仰、宗教の自由を尊重する」と確約したという。

それを受け、べネディクト16世が2007年1月25日、法王庁内でグエン・タン・ズン首相と会談し、09年12月11日にはグエン・ミン・チェット国家主席をバチカンに招いている。ベトナムとバチカン両国間の首脳交流は急速に進展していったわけだ。

最近では、グエン・タン・ズン首相が2014年10月、バチカンを再訪し、フランシスコ法王と会談。昨年1月には今度はバチカンから福音宣教省長官フェルナンド・フィローニ枢機卿が、ベトナムを訪問し、グエン・タン・ズン首相と会談している、といった具合だ。ズン首相は、「わが国は宗教の自由が保障されている」と強調し、バチカンとの政府レベルの交流を歓迎している。

ちなみに、同国共産党政権はここ数年、国民の宗教生活に関心を示し、信仰の自由を次第に尊重する政策に軌道修正している。その理由は、国民経済の発展のために国際社会への再統合を目指すという同国政府の狙いがあると受け取られている。一方、バチカンにとって、ベトナムはフィリピン、韓国と共にアジアのカトリック国であり、バチカンのアジア宣教にとって非常に重要な国だ。両国の狙いが一致しているわけだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年10月24日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像はバチカン放送局サイトより)。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。