【映画評】ジェーン

渡 まち子

西部の荒野で、ジェーンは、夫ハムと娘の3人で穏やかに暮らしていた。だがハムが、悪名高いビショップ一家の首領ジョン・ビショップに撃たれて重症を負う。すべてを奪い去るまで執念深く追い続けるビショップの恐ろしさを知るジェーンは、瀕死の夫と愛する娘を守ろうと決意。すがる思いで、南北戦争の英雄でかつての恋人・ダンに助けを求める。迫る敵を前に、それぞれの過去、そして人生の真実が徐々に明らかになる中、ジェーンは運命に抗い、戦うことを決める…。

西部・ニューメキシコを舞台に、夫を撃った悪漢に戦いを挑む女性を描く西部劇「ジェーン」。過去の作品を見ても、西部劇での女性の活躍は限られるが、唯一、異彩を放つキャラは有名な実在の女傑カラミティ・ジェーンだ。その人と同じ名前を持つ本作のヒロインは、家族を守るために銃を持つ。主人公を演じるナタリー・ポートマンは、製作も務めているので、本作への思い入れは強いのだろう。だが演技や演出はすべて淡々としている。というのも復讐劇やアクションよりも、二人の男性の間で心が揺れる女性のメロドラマの割合が大きいのだ。これを受け入れられるかどうかで、本作の評価が分かれるだろうし、伝統的な西部劇を期待していると肩透かしをクラうはず。だが決して簡単ではなかった当時の女性の生き方や思いをすべて背負って、最後に悪に立ち向かう姿は、ご都合主義と思いつつも、やはり胸がすく。男優陣は演技派のイイ男が揃っているが、ユアン・マクレガーは悪役としては線が細すぎてちょっとミス・キャスト。派手でかっこいい西部劇というより、フェミニズム映画の色合いが濃いので、女性ファンも抵抗なく見られるだろう。
【50点】
(原題「JANE GOT A GUN」)
(アメリカ/ギャヴィン・オコナー監督/ナタリー・ポートマン、ユアン・マクレガー、ジョエル・エドガートン、他)
(フェミニズム度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年10月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。