米連邦公開市場委員会(FOMC)が11月1~2日に開催されます。米大統領選の直前とあってFF先物市場では91.6%が据え置きを織り込んでいますが、注目は声明文に挟み込んでくるメッセージですよね。では、本サイト恒例のエコノミスト予想をご紹介しましょう。
JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミスト
マーケット関係者の誰もが予想する通り、据え置きを見込む。接戦の様相を呈する米大統領選を前に動きづらい一方、参加者の間では12月利上げで合意が形成されつつあるようで、声明文ではポーズが重要な“歌舞伎の踊り”のごとき内容となるだろう。
9月声明文では、利上げの論拠が高まったとしつつ“当面は(最大限の雇用とインフレ2%という二大)目標への進展が継続しているというさらなる証拠を待つことを決定した(for the time being, to wait for further evidence of continued progress toward its objectives.)”とした。今回の声明文では”さらなる幾分の証拠(some further objective)“に差し替えると予想。2015年7月FOMC声明文にならったもので、利上げが経済指標次第である点を強調できる。”次回会合で“との文言を挟む余地もあるが、経済指標次第との意味合いが薄まる上、同文言が使用された2015年10月FOMCでの利上げ織り込み度が40%程度だったことを踏まえると、今は非常に高くその必要性に乏しい。
統治目標の遵守に関わる第2段落では、9月FOMCに続き「短期的な経済見通しリスクは概して均衡に見える(roughly balanced)」を維持するだろう。据え置きには、9月FOMCと同じくカンザスシティ連銀のジョージ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁、そしてボストン連銀のローゼングレン総裁が反対票を投じる見通しだ。
労働参加率などは改善示すも、依然としてリーマン・ショック発生時期の水準を回復できず。引き続きゆるやかな利上げを継続する公算。
(作成:My Big Apple Ny)
BNPパリバのポール・モーティマー=リー北米担当主席エコノミスト
今回のFOMCでは据え置き決定するとともに、声明文は調整する程度だろう。前年の利上げ時期と同じように、9月FOMCで短期的なリスクは「概して均衡」との文言に差し替え利上げへの楔を打った。足元の経済指標では雇用や消費が軟調だったものの、見通しを変える必要はない。インフレの上昇を認識するか否かが問題で、“インフレは短期的に低い水準で推移にとどまる見通し(Inflation is expected to remain low in the near-term)”との文言が削除される可能性がある。恐らく“インフレは数ヵ月の間に低水準から上向く(inflation is expected to move up from low levels in coming months)”に変更し、その上で中期的な見通しは9月と変更なしとの姿勢を打ち出すのではないか。FOMCは、米大統領選を控えマーケットを波乱に陥れるようなことはしないだろう。
――米大統領選を控え、声明文を微調整しマーケットにサプライズを与えない見通しで両者一致しました。今回はイエレンFRB議長の記者会見なども予定せず、議事録でどのように12月利上げへ向けた議論を展開したかに照準が当てられそうです。
(カバー写真:Tyler Merbler/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年10月31日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。