今年は、BREXIT然り予想外の展開が目立ちますね。メジャーリーグでもシカゴ・カブスが7戦にわたる激闘の末、クリーブランド・インディアンスだけでなく”ヤギの呪い”を打ち破り108年ぶりにワールド・シリーズを制しました。ヤギの呪いとは、1945年のワールド・シリーズ第4戦でビリー・ゴートというあだ名のファンがペットのヤギと共に入場することをこの日に限って断られたことに由来します。ビリー・ゴートがカブスのホームで「ワールド・シリーズが行われることはないだろう」との言葉を残し、その後カブスは2015年までワールド・シリーズにさえ出場できませんでした。
今年のワールド・シリーズは、第4戦まで1−3でカブスが負け越していました。あと1戦で敗北という劣勢を覆したのは1958年のNYヤンキース、1968年のデトロイト・タイガース、1979年のピッツバーグ・パイレーツの3チームのみ。大喜びしているのは選手、ファン、そしてオーナーでしょう。
カブスのオーナーと言えば、トム・リケッツ氏。大手オンライン証券アメリトレードの創立者、ジョー・リケッツ氏の息子です。共和党の支持者で大口の献金者として知られますが、予備選段階ではアンチ・トランプでした。ところが本選でリケッツ氏は、トランプ候補の支持へ転じたのです。
プレーオフではイリノイ州がオバマ米大統領のお膝元で民主党支持者が多い事情からカブスのホームであるリグレー・フィールドでの選挙イベントを回避し、プレーオフ中の選挙CMも手控えたとされています。しかしながらリケッツ氏は9月後半、トランプ候補支持のスーパーPACであるフューチャー45に100万ドル寄付していました。父親のジョーのほか、カジノ業界の大物シェルドン・アデルソン氏も巨額の献金者として名前を連ねています。
そのフューチャー45、反クリントンの広告展開をヒスパニック層へ広げスペイン語で展開中。またフォックス・ニュースによると、トランプ支持のスーパーPACはTV広告に1000万ドルを投じているんですね。クリントン陣営の資金力(10月19日時点で現金保有額はクリントン候補で7815万ドル、トランプ候補は2136万ドル)には及ばないものの、トランプ候補は追い風を受けて接戦を制するのでしょうか。
有力な選挙予測サイト、ファイブサーティエイトの創立者であるネイト・シルバー氏はツイッターでこうつぶやきました。
(出所:Twitter)
カブス優勝だけでなく、今回のワールド・シリーズは何かを暗示するかのようなサインがいくつか存在します。
カブスが最後に優勝した1908年と言えば、米大統領は共和党のセオドア・ルーズベルト氏でした。
そして1992年にインディアンスがワールド・シリーズに進出した当時、現職のブッシュ米大統領をアーカンソー州知事だったビル・クリントン知事が打ち負かすという番狂わせが生じたものです。
またクリーブランドと言えば今年、オハイオ州で共和党全国党大会が開催された場所でもあります。オハイオ州は1964年以降、13回に及ぶ選挙で正確に米大統領を選出してきました。回数では共和党が7回、民主党が6回で、過去に民主党候補を2回選んだ後は共和党に鞍替えしていたのです。
ネイト・シルバー氏率いるファイブサーティーエイトの予測値ではクリントン候補が勝利する確率は65.5%、トランプ候補が34.4%となり、トランプ候補が10%台から急浮上中。前代未聞の米大統領選は、手に汗握る状況が続きます。
(カバー写真:Mike Burton/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年11月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。