路地裏にひっそりとたたずむ、カウンターだけの小さな店“めしや”には、マスターの作る味と居心地の良さを求めて、毎晩、客が集まっている。ストレス発散のために喪服を着る趣味がある範子は、実際に葬式で出会った男に惹かれる。老舗のそば屋の息子の清太は、母が子離れしてくれないため、年上の恋人を紹介できずにいた。そして九州から出てきた初老の夕起子は、金に困った息子のため、息子の知人だという男に大金を渡してしまう。春夏秋冬、ワケありの客がめしやを訪れ、それぞれの人生が交錯するが…。
前作でマスターから救われたみちるが、今度は、息子への複雑な愛情を胸に秘める初老の女性・夕起子を親身になって助ける姿には、このシリーズを象徴する温かさがにじんでいる。みちるはその優しさを「自分はマスターに助けられたから、今度はそのおすそ分けなんです」と表現するのだ。路地裏で暮らすお巡りさんや刑事たち、ヤクザの常連客までもが、めしやに来れば皆“いい顔”になる。ここでは決して豪華な料理は登場しないが、焼肉定食、焼きうどん、豚汁定食などには、涙を隠し味に、人の心を癒す特別な味付けがなされているのだ。それにしてもマスター自身の恋は今回もまた、もどかしい。次回作を期待したくなる映画だ。
【70点】
(原題「続・深夜食堂」)
(日本/松岡錠司監督/小林薫、佐藤浩市、池松壮亮、他)
(ほっこり度:★★★★☆)
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年11月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。