【映画評】ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

渡 まち子

元米軍の優秀な秘密捜査官だったジャック・リーチャーは、今は街から街へとあてもなく放浪を続ける生活を送っている。ある日、リーチャーは、かつて所属していた陸軍内部調査部のターナー少佐が、身に覚えのない罪をきせられ逮捕されたことを知る。彼女を救い出して共に事態の真相を追ううちに、軍内部の不穏な動きをつかむが…。

リー・チャイルドの小説を実写化したアクション「アウトロー」の続編「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」。主人公のジャック・リーチャーは、基本的に一匹狼で、腕っぷしが強く、一級の情報収集と捜査能力はあるものの、協調性があるとは言えないタイプ。目指すものは正義のみでルールは問わない。そんなリーチャーだが、本作ではなんと女性の相棒ができる。しかも二人も!デートに誘おうと会いに行った自分の後任者のターナーは無実の罪で投獄されていて、脱獄させたはいいが共にお尋ね者の身となる。この逃避行に、過去に関係した女性が生んだ娘らしき少女が加わって、父・母・娘の疑似家族の形態をとりながら、真相を究明していくのだ。クールでハードボイルドなはずのリーチャーが、時にまごまごし翻弄される姿は、ちょっと新鮮である。とはいえ、そこはやっぱり“最後の大スター”のクルーズなので、しっかりとヒーローものの枠に収まっている。

前作同様、70年代を思わせるアナログ感覚たっぷりのアクション映画だが、製作も兼ねるクルーズは、より人間らしい姿をスクリーンにさらしている。「ミッション・インポッシブル」のイーサン・ハントのような華麗さは、ジャック・リーチャーにはない。年齢を重ねたリーチャーは、顔はむくみがちでシワもある。着ている服もくたびれているし、安いモーテルに泊まって作戦を練る。最先端の武器ではなく、素手での殴り合いで決着をつけるところは、素朴ですらある。これは、イケメンの俺様スターとしての限界をクルーズ自身が自覚して、人間臭さの魅力で勝負しようとしている証拠だ。軍の陰謀だけでなく、もしかすると恋、もしかしたら家族…という“サスペンス”に、安定した落とし前がつくところも心地よい。敵役の好演もあって、飽きずに見ることができる。
【65点】
(原題「JACK REACHER: NEVER GO BACK」)
(アメリカ/エドワード・ズウィック監督/トム・クルーズ、コビー・スマルダース、ダニカ・ヤロシュ、他)
(アナログ度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年11月11日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。