ぼくが専務理事を務めるデジタル教科書教材協議会(DiTT)は、2010年、日本で教育情報化が進まず後進国に甘んじている状況を懸念し、推進団体として設立しました。当時、政府もさほど力を入れていませんでした。
http://ditt.jp/
しかし東大元学長の小宮山宏さんが会長となり、ぼくや石戸奈々子さんらが事務局を引き受けて民間有志企業が立ち上がり、長尾真 京大元総長や安西祐一郎 元慶應義塾長らの応援も得て、活動を進めました。会員は現在70社。民間企業はその後、本分野のビジネス対応に本腰を入れました。先進的に取り組む自治体の首長らとのタッグ、超党派の国会議員連盟の結成などの広がりも見せました。
政府・知財計画でのデジタル教科書に関する記載、IT本部等での教育情報化推進の記載、2020年度の一人一台整備の政府決定、デジタル教科書の制度化、電波利用料の活用、プログラミング教育の必修化など、DiTTだけの成果とは言いませんが、提言してきたことが現実となってきており、この分野を先導してきたと自負しています。
そしてこのたび、超党派議員連盟で「教育情報化推進法案」を策定することとなりました。民間サイドからはぼくらDiTT関係者が参加して作業をします。設立6年にして、国会、政府、自治体、学校現場、産業界への成果は現れたかと。
ところが、それでも日本は後進国のままです。この分野の取組はOECD加盟国中、最低レベルと言ってよい。いよいよ動き始めたからこそ、この時期に一段の高みに持ち上げなければいけません。国会や政府が動いている中で、改めて民間サイドの姿勢が問われます。
そこでこのたびDiTTは、当初の理念に立ち戻って、その機能を強化し、推進力を高めるため、任意団体から一般社団法人へと歩を進めることとしました。11月10日に開催された理事会で決定しました。
これによりDiTTはまず、国・自治体・現場などと連携して進めてきた調査研究や提言等の活動を強化します。
さらに、以下のような新機能を構築することを検討しています。
① プログラミング教育の推進
政府はプログラミング教育等を推進するため、「官民コンソーシアム」を形成することを求めています。DiTTはプログラミング教育のプラットフォームを形成しているNPO「CANVAS」と連携し、官民コンソーシアムに名乗りを上げて、その中核を担います。
近くDiTT内にWGを設けます。
参考:CANVASの「プログラミング教育普及プロジェクト」
http://csforall.jp/
②「教育情報化評価機構」の設立
教育情報化に関する政府の予算措置その他の施策について、検証・評価する高次の有識者・専門家からなる第三者機関的な組織を形成します。予算執行の是非やその成果、制度改正、自治体の対応等について幅広く評価することとします。
早急に設置する予定です。
③ 教材著作権処理スキームの構築
デジタル教科書に関する著作権制度について文化審議会での議論が始まっていますが、その帰趨に関わらず、デジタルの教科書・教材に関する著作権は処理を円滑化する民間のスキームが求められます。教科書・教材業界、権利者及び利用者との関係を調整する仕組みを構築します。
これもDiTT内にWGを設けます。
④ 青少年のネット利用リテラシー教育の強化
学校教育の情報化が進展することは、青少年のネット利用の安全・安心対策を高めることを必要とします。その活動を進めている内閣府、総務省、経産省、文科省、警察庁及び関係団体・業界と連携し、対策を講じてまいります。
他にもすべきこと、やったほうがいいこと、いろいろありましょう。広くアイディアを求めたいところです。
DiTTの社団化は、理事会決定したといっても総会マターであり、その決議を経るまでは正式決定ではありません。決定に至るまで、議論を高めつつ、オープンに情報を発してまいります。
そこで、この件を議論するための臨時シンポジウム「教育情報化推進団体の在り方について」を開催することとなりました。
11/26(土)、午前10:00~11:00、KMDフォーラム(慶應義塾大学三田キャンパス)の場で、
教育情報化を推進する組織の在り方について会議を開きます。超党派の国会議員連盟の遠藤利明会長もお見えです。席に限りはありますが、ぜひお越しください。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年11月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。