クリントン氏が米大統領選で敗北した理由

安田 佐和子

米大統領選が幕を閉じ、投票率など様々なデータが挙がってきています。

投票率をめぐっては、12日の時点でCNNが有権者全体をベースに55%との数字を弾き出し20年ぶりの低水準と伝えクリントン候補の敗北理由との分析が導かれていました。筆者のNYの友人からは「投票に行かなくたって、ヒラリーが勝つよ」との声が聞かれたものです。ただし別の友人から「朝方に投票所へ出掛けたら長蛇の列ができていたので、夜に投票にしに行ったんだけど”投票しました(I voted)ステッカー”を貰えなかった」との不満が漏れたように、時間が経過するにつれて数字は上昇中のようで選挙予測サイトのファイブサーティーエイトは58.6%と、2012年の54.2%だけでなく1972~2000年平均を上回ったと伝えています。

やはりクリントン敗北の有力説は、こちらで紹介した通りクリントン候補の支持者が投票に行かなかったというものでしょう。選挙前の世論調査でもトランプ候補の支持率は一貫して40%台を維持し、しかも同氏がメディアなどのクリントン氏の優勢を示すデータが「不正(rigged)」であると散々訴えた事情もあり、メディアや現体制への不信感を持つトランプ支持者が確実に投票所へ足を向けたと考えられます。

(作成:NYタイムズ紙を基にMy Big Apple NY)

ニューヨーク・タイムズ紙の出口調査でも、クリントン候補の敗因が伺えます。

男性と白人以外でクリントン候補に投票した割合が高かったとはいえ、注目は2012年との比較です。▲で表した数字は赤い文字が共和党候補の割合が上昇した数字を、青い文字は民主党候補が上昇した数字を示します。こうしてみると、トランプに投票した女性は42%とそれほど低い数字でない上、民主党へ投票した割合も2012年から1ポイント上昇したに過ぎません。また2012年との投票動向比較では全人種、並びに年齢別でも18~29歳の若い層で共和党候補に投票した割合が改善していました。民主党の支持基盤とみられる層ですら、女性を除き共和党候補へなびいた様子が伺えます。

2018年の中間選挙では、民主党の改選議席数が28議席と共和党の8議席を上回ります。トランプ政権発足後、劣勢を巻き返すことができるのか。引退するハリー・リード米上院院内総務の後任として最右翼のチャック・シューマー議員が命運を握るでしょう。同議員は2005年に為替操作を理由に中国製品に27.5%の関税を課す法案を取り纏めた一人であり、かつポール・ライアン米下院議長とインフラ支出に本国投資法に酷似した案を推進する人物。ワシントン情報筋が「マケイン上院議員(アリゾナ州、2008年の米大統領候補)をして、『ワシントンで最も危険な場所はシューマー議員とカメラの間だ』と言わしめた」と明かすキャラクターであり、台風の目となることは間違いありません。

(カバー写真:nznationalparty/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年11月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。