介護の現場で働く外国人材を拡大するため、在留資格に「介護」を新設する改正出入国管理・難民認定法が18日の参院本会議で自民、公明、民進など各党の賛成多数で可決、成立した。介護分野の人手不足を補うため、日本の介護福祉士の国家資格を持つ外国人の受け入れを積極化する。
日本経済新聞 2016年11月18日(金)
この政策は、外国人技能実習制度を利用して、日本で介護職として働いてもらおうという話なのだが、不可能である。なぜなら、求める能力が高度すぎるからだ。
日本国内では、すでに多くの外国人労働者が働いているが、製造業が大半だ。日本語をあまり使わない単純労働だ。
一方、介護職は接客業だ。対人労働だから、高度な日本語能力が求められる。その上、「記録」を細かく業界用語で書かなくてはならない。さらに口頭で申し送りをする。これは難易度が高い。しかも、日本語の介護福祉士国家試験に合格しなくてはならない(外国人が在留資格を得るには介護福祉士資格が必要である)。
外国人を日本人に置き換えてみたら、どれだけ困難かがわかる。
日本人が中国に入国し、働きながら、中国語を習得する。職場で支障なく会話できるようになり、記録をとり、口頭で申し送りができるようになる。5年以内に、中国語で書かれたペーパーテストで国家試験に合格する。
こんなことができる日本人は、かなり頭の良い人だけだろう。
日本に入国してから日本語を習得し、かつ、介護福祉士国家試験に合格できる外国人は、平均的日本人よりも、語学能力が高いのである。彼らを雇うには、日本人介護職よりも、遥かに高い賃金を払わねばならない。なぜなら、彼らは、その語学能力を使えば、介護職よりも、はるかに高賃金の職種に就けるからだ。
「日本は賃金が高いから、門戸を開けば、途上国からいくらでも労働者が入ってきて、低賃金で使える」
というようなことは、介護職に関しては、ありそうもない。
井上晃宏(医師)