「意識高い系」を総括する

マイナンバーの提出依頼の手紙がいっぱい。「簡易書留で」ってあるたびに「あぁ、郵便局いかなくちゃ」と思ったり。でも、ある企業のマイナンバー提出封筒は切手が同封されておらず。料金後納郵便でもなく。やれやれだぜ。絶大なる経済力でなんとかしてやったけどな。

それはそうと「意識高い系」だ。本日、11月23日(水)の夜にNHKの「ガチゴエ」というラジオ番組に生出演する。私は22時すぎからの出演だ。テーマは「意識高い系」だ。この問題を総括する。


2012年の、ちょうど今頃、私はこんな本を発表した。おかげ様で、「意識高い系」という言葉はブレークし、ドラマの元ネタにもなった。

この本の前書きで私はこんなふうに吠えている。

「意識が高い人」

ここ数年、こんな言葉をネット上でよく見かける。

「意識が高い」

この言葉は、本来は、ポジティブな意味だったはずだ。例えば、社会問題に対する関心が高い、自分のキャリアについてよく考えている、勉強熱心、積極的に交流する、リーダーになりたいと思っている・・・。こんな人を想像するのではないだろうか。

ネット上で語られる「意識が高い人」はというと・・・。もちろん、これらのことはよく考えているし、とり組んでいたりする。

しかし、だ。

あまりにも前のめりに取り組んでいるがゆえに、時に滑稽に見えたり、痛いなと思ったり、ウザいなと思ったりする。気持ち悪いと思うことすらある。中には、明らかに表面的に取り組んでいることがバレバレという人だっている。

自分のプロフィールを誇張する奴!
芸能人でもないのに、かっこよすぎるプロフィール写真を撮る自分大好きな奴!
名言(実は著名人の受け売り)を吐きまくる奴!
やたらと人脈を作り、自慢する奴!
勉強会、異業種交流会をやたらと開く奴!
将来のビジョンについて、ムダに熱く語る奴!
ビジネス書を読みまくって、その真似をしまくる奴!

「どこまで自由に生きられるかという、人生を賭けた一大実験ですから」
これは、「ノマドワーカー」安藤美冬氏が「情熱大陸」に出演した際の一言だ。賛否両論を呼んだセリフだ。いや、テレビ番組だから、いい。安藤美冬氏はいまやテレビにもよく出る芸能人さまだから、いい。そして、一般の、どんな地味な生活を送っている個人に、ポリシー、こだわりがあるし、それぞれの名言はあると思う。

でも、一般人がいつもこのような意識の高い言葉を発信しているのは、何かおかしくないかと思ってしまうのだ。

いや、頑張っている人は否定したり、批判しちゃいけないと思う。それは間違いない。

しかし、だ。

あまりにも頑張る方向を間違えていたり、空回りしたり、表面的だなと感じたりすると、注意してあげた方がいいなと思ったりもするわけだ。時には、明らかに人を利用していたり、人に迷惑をかけている奴だっている。何よりも、まずは目の前の仕事をしろと言いたい。

そう、意識の高い人と言いつつ、実際は「意識の高い人(笑)」くらいになっているのだ。

特に、ソーシャルメディアの時代となり、こういうバカが蔓延っている様子が、可視化されるようになってきた。
※入稿1歩手前くらいの原稿データをもとに引用。実際は、ゲラで手を入れている。また、ネット転載用に改行などを適宜入れた。

読み返してみて感動した。ああ、ブレていないな、と。一方で、この頃よりは成長したな、と。

もっとも、流行語(と自分で言うのはあれだけど)の宿命で、言葉の意味は変質していく。最初は、頑張っているけど何かこう実力や行動を伴わず、空回りしている痛い人を揶揄するような、叱咤激励するような言葉だったのだが、だんだん「頑張っている人をからかう言葉」に変質していった。だから、この言葉が「若者を萎縮させた」みたいな意見も頂いたし、若者叩きをする人レッテルも貼られたりした。

ただ、じゃあ、常見やその取り巻きが悪い奴。

ってことで議論を終了させていいんだろうか?

叩かれる側、頑張っている若者を応援する側にも相当問題があったんじゃないかと思っている。若者のピュアさに便乗して、いい人を演じて。

別の観点で言うならば、社会の断絶と交わりが可視化された現象の一つが意識高い系問題だと思っている。職業、収入、価値観、政治や宗教に対する考え方などの古典的なプロフィール項目はもちろん、様々な要因から社会は断絶、分断している。しかし、それがソーシャルメディアなどを媒介することによって、交わってしまう。そこで起こる対立が、意識高い系とそれを揶揄する立場だ。

さらにもうひとつの観点は、自由競争を装った社会の弊害のようなものだ。つまり、ガンバレばなんとかなる、何かが変わる的な熱病に冒され、でも実力が伴わないもの。それを揶揄する者、という。

もちろん、ソーシャルメディア時代でもあり、競争の時代でもあり、セルフブランディングに何かと力を入れてしまうというのもあり。

50分という短い時間だが、諸々、総括するつもりだ。声の出演で、朝井リョウも登場するらしい。負けないぜ。

腐敗しきった日本社会に、私は檄を叩きつける。

ぜひ、聴いて頂きたい。

夜露死苦。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2016年11月23日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた常見氏に心より感謝申し上げます。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。