ウィスコンシンで再集計嘆願書を提出、ペンシルベニアやミシガンも続く?

緑の党の米大統領候補、ジル・スタイン氏が求めた米大統領選の投票結果をめぐる再集計がウィスコンシン州で実を結びつつあります。

スタイン氏は既に再集計に向け600万ドル超の資金を集めたといい、この金額はウィスコンシン州とペンシルベニア州での再集計に必要な資金を賄えるとか。集まった資金は、再集計向けの独立した口座で管理されいると説明しました。トランプ次期米大統領はと言えば、再集計の決定に「詐欺だ(scam)」と口撃、再集計を狙った資金集めも「私腹を肥やすため」と批判しています。

事の発端はニューヨーク・マガジン誌が報じたウィスコンシン州、ペンシルベニア州、ミシガン州など3つの接戦州を舞台とした投票システムへのハッカー攻撃問題です。ロシア政府の関与も噂され、スタイン候補が再集計を目指し立ち上がり資金集めを先導してきました。ウィスコンシン州はスタイン氏から再集計の嘆願書を受け取ったと表明し、同陣営が費用を支払えば再集計プロセスを開始するといいます。

これまで沈黙を保ってきた民主党ヒラリー・クリントン候補も、再集計の嘆願に参戦してきました。同陣営の弁護士であるマーク・エリック・イリアス氏は、ミディアムに投稿し”ハッキングの証拠を発見したわけではない”と断りつつ、米大統領選後から”何百通ものメッセージやメール、電話を受け取り、クリントン氏に不利となるようハッキングされた米大統領選結果について調査を行うべきと要請を受けた”と明かします。その上で、必要な対応を講じたと説明しました。3州で、トランプ候補とクリントン候補の差がわずか10万7,000票だったと付け加えるのも忘れません。

再集計嘆願書の締め切りはウィスコンシン州が11月25日で既に手続き済みで、ペンシルベニア州は11月28日、ミシガン州は11月30日の予定です。

ここで、2016年の米大統領選の結果を振り返ってみましょう。

(出所:270 to win)

ウィスコンシン州の選挙人は10人、ミシガン州は16人、ペンシルベニア州は20人で、トランプ氏の勝利だった結果が全て覆ればクリントン候補が278人を獲得し、天下分け目の270人を辛くも突破する公算。前代未聞の大逆転勝利をもたらしかねません。

ただしクリントン氏は敗北宣言で、「我々は結果を受け入れ未来を見据えなければならない。ドナルド・トランプ氏が大統領になるのだ」と明言しました。オバマ米大統領自身も、トランプ新政権誕生に向けアメリカ人同士が仲直りすべきだと勧めています。アメリカ人同士で憎悪と二極化を煽れば、米経済に打撃を与えかねません。Never Say Neverとは良く言ったものですが、ミシガン州での票差こそ1万票程度だったとはいえ、ペンシルベニア州では7万票差以上に及びます。さすがに再集計で勝者が変わってしまうような世紀の後出しジャンケンを迎えるリスクは低いでしょう。投票システムの根幹を揺るがしますしね。

本当にハッカー攻撃があったか否かは別として、個人的にはひとつ気掛かりなことが。ペンシルベニア州やウィスコンシン州の結果をめぐり、速報が出ていたにも関わらずトランプ候補の勝利宣言まで約2時間半近く待たねばなりませんでした。あの時、水面下で何があったのか少なくとも手掛かりが出てくれば良いのですが。

(カバー写真:Bart Everson/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年11月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。