同じ帰化系政治家でも蓮舫とヴァルスのここが違う

八幡 和郎

ヴァルス氏と蓮舫氏(Wikipedia、民進党サイトより:編集部)

フランスのヴァルス首相が大統領選挙立候補のために首相を辞任し、カズヌーブ内相が首相に就任。ヴァルス首相については、アゴラでもしばしば取り上げているように、スペインからの帰化人だ。ただし、結婚したころからフランスに住んでいたようだ。

母親はイタリア系スイス人。そして、フランスで兵役をするために、帰化した。ヨーロッパでは兵役をどこでするかがどこの国に忠誠を誓うかの判断ポイントとして重視される。二重国籍ではないようだ(※Wikipediaフランス語版)。

蓮舫と違ってフランスへの感謝をことあるごとに口にすることで政界での地位を得たが、それでも、大統領となるためには、帰化人であることは障害になっている。やはりトップだけはという気持ちは強いのだ。

昨年、ユーロ選手権でバルサの応援にベルリンに出かけて非難囂々になって人気を落としたが、厳しい移民への対策で挽回気味。

イギリスのブレアやドイツのシュレーダー、イタリアのレンツィらとともにソーシャル・リベラリズムと言われる流れに属する。

過去に「企業には利益を上げて雇用を増やしてもらう」、「マルクス主義の理想にとらわれた社会主義からは決別する」「イスラム教徒のベールはファッショででも主張でもなく奴隷的な拘束のシンボル」「フランスに同化する気がないならジプシはルーマニアに帰れ」といった発言をしている。

自由と民主主義、非宗教国家としてのフランスの価値を妥協なく守るというのが基本姿勢である。

左派では、社会党内左派のモントブール元経済相、左派と右派の垣根を取り払うことを主張するマクロン経済相、社会党内左派が離脱し共産党と提携するメランション左派党党首が手を上げて混沌。予備選が行われるかは不明。ヴァルス首相が社会党内で有力ではあるが、党内左派の支持を得られるかは疑問で、中間派から誰か出てくるかもしれない。

しかし、いまのところ、右派のフィヨン氏と極右のルペンの決選投票になると見られる。むしろ、五年後の次期選挙のときに、誰が有力左派候補となるかの布石を打てるかが焦点かもしれない。フランス政界の問題としては社会党支持である私から見ても、次はフィヨンにやらせて、マクロンやヴァルスが五年かけて準備するのが長い目では良いような気もする。

*帰化という言葉は、生まれたときに国籍がないが、のちに取得した人に使うべきで、蓮舫の場合もそうだから、法律的に取得であっても、帰化といって間違いではない。実際、蓮舫も二年ほどまえまでそういっていたのだから、帰化でないと本人であれ、第三者でも帰化でなく取得だというのはおかしい。