民進党と蓮舫の「気持ちがいいまでに忘れる力」

八幡 和郎

行政刷新相時代に事業仕分けPTに臨む蓮舫氏(内閣府サイトより;編集部)

民進党が政治的モラルの上で許しがたいのは、自分たちが過去に主張していたことと同じことを自民党や安倍内閣がすると、口汚くののしることだ。集団的安全保障でも過去に当時の岡田代表を始め多くの幹部がそれを肯定していたのにもかかわらず、戦争に巻き込まれる、徴兵制につながる、憲法違反だなどと言い出した。

今回のカジノ法案でも、自民党以上に民主党は熱心だったはずだ。党首討論にてIR推進法案の問題点について説明を避ける安倍首相に対し、民進党の蓮舫代表が「息をするようにウソをつく。気持ちいいまでの忘れる力を何とかして下さい」と詰め寄ったが、それは蓮舫氏にこそ当てはまる。この蓮舫氏の物忘れの見事さについては先頃発売になったアゴラの新田哲史編集長の『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』  (ワニブックスPLUS新書) と、私の近刊『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』でも紹介されているがともかくひどい 

そのことについて木曾崇氏がブログで「蓮舫代表、『息をするようにウソをつく。気持ちいいまでの忘れる力』を発揮する」で書いているので細かいところは参照して欲しいが、12月8日の蓮舫・民進党代表の記者会見で、「民主党政権下の行政刷新会議における改革事項の中に『民間事業者によるカジノの解禁』が記載されており、当時の行政刷新担当大臣が蓮舫代表であったという事実。『当時と方針が変わったのか?』という記者の問いに対して、蓮舫代表は 「当時の規制改革の数あるアイテムの中のひとつだと認識をしております。ただ、それをもってして議員立法をさらに進めるべきだと私が力を入れた事もありませんし、政府として成長の中にひとつの選択としてあるという程度の認識です。」と回答した。  

しかし、民主党政権の平成22年に国土交通省で策定された「成長戦略」の公示文書には、「カジノに関しては、導入による様々な負の副次的効果(青少年への悪影響、マネーロンダリング等)が懸念されることから、外国人に利用を限定する、クルーズ船上でのカジノに限定して認めるといった条件も検討した上で、カジノを含めた総合リゾート開発(IR)として参入を希望する外資などがあれば、法的措置を講ずることも含め慎重に検討する。また、その制度設計にあたっては、ライセンス供与による特別立法、利益の一部を公益的事業にあてる等公益性確保のための仕組み、導入による負の副次的効果回避の仕組みについてあわせて検討する。地域の特性を活かして2~3年間で観光拠点としての魅力を向上できるポテンシャルのある地域を選定し、省庁横断的に集中して支援を行うプロジェクトの実施を検討する」とある。 

また、新田哲史氏が「『息をするようにウソをついている』のは蓮舫氏ではないか」で書いているように、「『私は国家の品格に欠くと思う』は蛇足どころか余計な波紋を巻き起こしかねない。安倍総理の経済観を攻撃するフレーズとして決めゼリフを言ったつもりだろうが、すでにネット上から突っ込まれているように、既存のカジノを持つ国に対して失礼極まりない」ということだと思う。 

そもそも、それなら民進党は海外のカジノとか、そこを日本人が利用することについて厳しい態度をとってきたのか。それなら、海外でのカジノ利用について国外犯として処罰するとか、いろいろできるのだ。 

民進党はパチンコを廃止するとか主張してきたのか。カジノで身を滅ぼすのはいたとしても、どっちかいうと、一握りの富裕層だ。それに対して、女性も含めた多くの庶民をカジノ依存症で身を滅ばさせ,車のなかで放置された子供の死まで招いているパチンコはどうしていいのか。

そうなると、蓮舫代表が初の党首討論のあまりにも大きい部分をカジノ法案に費やしたのも、マカオやウォーカーヒルのカジノの利益を擁護したかったとか、経営者に圧倒的に国籍のあるなしを問わずコリアンが多いパチンコ産業のためかといわれても仕方ない。 

消費税とかTPPでも、過去に推進していた政策を良くも反対にまわると思うが、それらについては、屁理屈くらいは付けているし、根本的に否定しているのでなく、細かいやり方がいけないようなことをいうに留まりそもそも反対とはいわない。

ところが、集団的安全保障とか、カジノ、さらには原発についてもそういってよいのだが、かつて検討したり肯定的なことをいっていたのと根本的に相容れないような発言を平気でする。 

これはちょっと、恥ずかしい。

八幡和郎
飛鳥新社
2016-12-21

 

 

新田 哲史
ワニブックス
2016-12-08

 

八幡和郎
イースト・プレス
2015-10-10