解散風を吹かすのも止めるのも、安倍さんの思いのまま

首相官邸サイトより(編集部)

安倍さんは、来年1月の衆議院解散の見送りを決めたようだ。

今日と明日の2日間のプーチン大統領との首脳会談では平和条約締結交渉が上手く行かなくなりそうだ、という見通しが立ったのだと思う。

来年1月の解散しようが来年の秋口以降解散しようが選挙結果は特に変わりそうにない、ということになったら誰でも解散は踏み止まる。

先の展望が開かないのに闇雲に衆議院の解散などという賭けに出るのは、いくらIR法に熱心だった方々でも避ける。

負けることが分った選挙は、よほどの事情がない限りしない。
負けることが分って解散したのは自分の言葉に忠実な民主党時代の野田さんぐらいなもので、普通の人は損だと思ったことはあれやこれや理屈をつけて先延ばしをするものだ。

安倍さんは、時の流れを読むのにずいぶん長けてきたようだ。

打つ手の一つ一つが周到である。
勝負所を見極めているような感さえある。
次の選挙で落選するかも知れない、と言われてきた人たちは多分胸を撫で下ろしておられるだろう。
1年近く首が繋がった、ということだろう。

しかし、来年の秋口以降になると、今危ないと言われている人たちは確実にもっと危なくなる。

ひょっとすると来年は公明党や公明党の支持者の方々が自民党一辺倒の態度を改める大きな転換期になるかも知れない。
いや、そうなるに違いない、というのが私の観測である。
自民党と維新の関係が近くなればなるほど、公明党は自民党から距離を置くようになる。
キャスチングボートは自分たちが握っている、ということをどこかで示したくなるはずだ。
公明党がキャスティングボートを握っていることを示す最高のチャンスは、何と言っても衆議院選挙である。

IR法案の採決を巡って公明党の議員の間で賛否が大きく分かれた。
誰が見ても公明党が危機的な状況を迎えていることは、明らかだ。

一枚岩だと思われていた政党の内部で重要法案についての賛否が分かれたということは、党としてのガバナンスが効かなくなったという証拠である。
公明党の支持層の間でも深刻な対立があることが表面化しつつある。

まもなく公明党内部での路線対立が大きくなるはずである。
私が見ている限りでは、どうも適当な調整役がいない。
誰もカリスマ的な力を発揮できなくなっている。

鶴の一声を発する人が、その弦の声を発することが出来ないような状況に陥っているのだとしたら、この危機は深刻である。

安倍さんがそこまで読んでいるかどうかは知らないが、1年先がどうなるかはまったく分からない。
私のブログを読んで選挙の準備を考えている人は、まだ、警戒は解かれない方がいい。

解散風は、吹かしたり、吹かすのを止めたり。
安倍さんの自由自在、思いのままである。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2016年12月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。