選択的夫婦別姓は、政治によってしか解決しない!

ここに、鈴木睦子さんという30歳の女性がいます。彼女は広告代理店でバリバリ働いており、自動車メーカーで働く男性と籍を入れずに事実婚をしています。 双方の両親も二人の仲を承認し、友人・知人たちも二人を夫婦として扱っています。

どうして、睦子さんは男性と籍を入れないのでしょう?
彼の姓が「近藤」だからです。 彼は一人っ子で「近藤」の姓を「鈴木」に変えることはできません。 睦子さんの勤務する広告代理店では、就業規則で旧姓の続用を禁止しており、睦子さんは結婚すると「近藤睦子」になってしまいます。 コンドームという避妊用具を連想させる名前になるのは睦子さんにとって辛いことだし、将来の子供のことを考えると籍を入れるのに躊躇しています。

そろそろ子供も欲しいのに、このままでは婚外子となってしまいます。 睦子さんはいつも思っています。 「私の戸籍が鈴木のままであっても誰にも迷惑をかけないのに、どうして法律は私達の幸せを踏み躙るのだろう。子供が学校で「お前のお母ちゃんはコンドーム」と言われてイジメられるかもしれない」

最高裁の判決は、夫婦別姓を認めませんでした。 それは当然のことです。 司法権は「具体的な紛争に関して法を適用して解決する国家機関」であって、法を作るのは「唯一の立法機関」である国会の権限なのです。 裁判所が夫婦別姓を認めて今の民法の規定を違憲と判断すれば、国会は「子供の氏をどうするか?」など戸籍法その他の法律の改正に着手しなければなりません。 司法権しか持たない裁判所が、民主的に選ばれた議員で構成される「国権の最高機関」たる国会に仕事を強制することは、明らかに「三権分立の原則」に反します。 だから、最高裁も選択的夫婦別姓を「立法権の問題」と判斷をしました。

このように、今の制度の下で不利益を負わされている夫婦が世の中にはたくさんいるのです。 「選択的」ですから、同じ氏にしたい夫婦は従来どおりで構いません。 同一にせず旧姓を選択したとして、一体誰に迷惑をかけるというのでしょう? 睦子さんのように、籍を入れたり出産することを躊躇している事実婚夫婦は世の中にたくさんいます。

自己のアイデンティティである氏名を決める権利は「自己決定権」として憲法13条で保障されています。 もちろん個人の権利は無制限に認められるものでなく、他人に迷惑をかけたり国庫の支出が必要な場合は自ずから制約されます。 選択的夫婦別姓にして、一体誰に迷惑がかかるでしょう? 特別に国庫から支出しなければならないお金があるのでしょうか? 一人でも多くの人達の役に立つのが政治の目的です。 選択的夫婦別姓という制度を作り出して、多くの人達の幸せを守ることこそ「正義」ではないでしょうか?

荘司 雅彦
幻冬舎
2016-05-28

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2016年12月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。