2016年はまさに「不倫学元年」でした。「まさか」のあの人まで不倫報道が続き、流行語大賞にも「ゲス不倫」がランクインしました。この影響でこれまで不倫を扱うことを敬遠してきた学者たちも「不倫」を学術的に考える「不倫学」に取り組みはじめています。
このシリーズ「大人の恋愛不倫学」では「人」という生物の構造として誰もが陥り得る不倫に向かわせる心理学的メカニズムを紹介します。
近年増えていると思われるのが、熟年不倫です。特に熟年女性の不倫の話は各方面で増えているようです。今回は妻に熟年不倫をされてしまう熟年男性にありがちなパターンをご紹介しましょう。
①妻が“家族”としか見えなくなった夫たち
結婚生活も長くなると妻を女として扱わなくなるご主人は少なくありません。
クーリッジ効果によると「女」に新奇性(目新しさ)がないと、男はあっという間に性的飽和状態(女性に女としての興味を失った状態)に陥ります。また男は本能的に若い女性により強い性的関心を持つように作られています。若い女性のほうが健康な子孫を残してくれる確率が高いので、長い進化の歴史の中でそうなってしまったようです。
その結果として、長く連れ添った妻はもはや“女”ではなく、「“家族”としかみられない」というご主人が生まれてしまうわけです。もちろん、決して愛情がないわけではありません。愛情の種類が“女”から“家族”にスライドしただけです。
②家族としての愛だけでは夫はATM化してしまう
問題は“家族”として愛情に妻が満足しているかどうかです。もちろん、これで満足できる妻もいます。ですが、全ての女性が家族としての愛情だけで満足できるわけではありません。
家族としての愛情は心理学的に言えば「愛着(離れられない)」に近いものです。「魅力的」とか、「素敵」とか、「素晴らしい!!」といった相手を価値上げする感情価が弱いのです。私たち人間は人から自分を価値上げする感情を向けられると高揚する動物です。家族としての愛着だけでは、このような高揚感が得られません。愛着も大事ですが、これだけでは味気ないものです。
では、夫に女として扱われない状況が長く続くと妻はどうなるのでしょうか。ご主人に「女」として見てもらえるように努めるでしょうか?私の知る限りですが、このような女性はほぼいません。夫が妻を女として扱わない状況が続くと、ほとんどの妻は夫を「男」と考えなくなります。夫に家庭にお金を入れる、または子育てや家事を手伝う、などの道具的な価値だけで見るようになってしまいます。いわゆる「夫のATM化」です。「女」として気を引く価値を夫に感じなくなってしまうのですね。
③妻は他の男には「新奇性のある女」という事実
そんな妻の雰囲気を察してか、それとも妻の本音に気づかないのか、熟年男性たちは妻に愛をささやくのを嫌がります。妻たちは、本当はそれを望んで悲しんでいる場合と、逆に「今さら気持ち悪いだけ」という場合がありますが、下の図のような夫婦関係の負のスパイラルが成立しているのです。
このスパイラルの中で不満を溜め込んだ妻の一部が熟年不倫に向かいます。パート先の上司、仕事の付き合い先、昔の同級生や元カレ…出会いのキッカケや関係はさまざまですが、夫に満たされない女としての高揚感を他の男に求めるのです。夫には性的飽和状態な妻であっても、他の男には「新奇な女」です。クーリッジ効果の働きで夫以外の男は、“男”として一生懸命になってくれるのです。こうして一部の熟年女性は夫との負のスパイラルから抜け出す手段として、熟年不倫という方法を取るのです。
熟年夫婦のご主人は負のスパイラルに気づかない、または見て見ぬふりをする、うちだけは違う…と現実逃避する、という傾向が強いようです。妻を不倫に向かわせたくないなら、くれぐれもそのようなことがないようにご注意ください。
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