【映画評】オアシス:スーパーソニック

1990年代最高のバンドであり、2009年に解散したイギリスのロックバンド、オアシス。リアムとノエルのギャラガー兄弟を中心とするこのバンドは数多くのヒット曲と驚異的なアルバム売上で、世界のロック・シーンをけん引した。映画は、兄弟の関係や家族の実情を織り交ぜながら、デビュー前の貴重な映像や、ライブ、メンバーや彼らの周囲の人々へのインタビューを通して、オアシスの音楽性に迫っていく…。

伝説的なバンド、オアシスのリアム・ギャラガーとノエル・ギャラガーが製作総指揮を務める音楽ドキュメンタリー「オアシス:スーパーソニック」。マンチェスターの公営住宅育ちの労働者階級のバンドは、瞬く間に栄光を手にし、頂点に上り詰めて壊れていく。音楽評は専門ではないが、この悪ガキバンドのゴタゴタや、歴史的な野外コンサートなどは、さすがに知っている。もちろん大ヒットした曲は聞き覚えがあるものばかりだ。映画で使われることも多い彼らの楽曲はどれも壮麗なメロディーが耳に残るが、オアシスはその粗暴さ、やんちゃぶりで有名。逮捕や失踪、暴言にドラッグと、スキャンダルまみれのバンドの、それでも美しく荒々しい名曲という、このギャップが興味深い。

内容は、デビュー前の映像や「モーニング・グローリー」のレコーディング風景など、よくぞ残っていたものだと感心する映像が満載でファンにはお宝ものだろう。ギャラガー兄弟が製作総指揮を務めるので、当然バンド寄りの作りになっているが、ブリットポップのもう一つの雄、ブラーとの比較や対立などは一切排除した構成が潔い。いつも冷めた目でオアシスというバンドを俯瞰で見ているような印象のノエルがネブワースのライブで「これは歴史だ!」と興奮して叫ぶ。野生児のようなリアムが珍しく冷静に「違う、ただのネブワースだ」と突っ込む。この有名なシーンは、愛憎入り乱れる兄弟の深い絆を感じさせて、何度見ても面白い。単なる音楽ドキュメンタリーとして見ても音楽ファンにとっては貴重な記録映画だが、家族という普遍的なテーマを忘れていない内容だからこそ、誰が見ても楽しめる。伝説的なバンド、オアシスとはいったい何だったのか。再定義する意味でも必見の1本だ。
【70点】
(原題「SUPERSONIC」)
(イギリス/マット・ホワイトクロス監督/オアシス(リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー他)
(音楽愛度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年12月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。