日中韓のどこが歴史の法螺が酷い?(古代)

八幡 和郎

オバマ大統領は日本にきたとき、「2000年以上の歴史をもつ」といったが、自虐史観の人たちはさっそく軍国主義者の宣伝にのったと噛みついていた。 

そして、最近、『リテラ』が『安倍政権が神武天皇実在論を本気で喧伝 「神武天皇は実在した」を本気で喧伝、産経もトンデモ神武本出版! 神話で国民を支配するカルト国家化』『とうとう、ここまできたか──。日に日にエスカレートしていく安倍政権の歴史修正主義だが、いよいよ連中は「神武天皇は実在した」なるトンデモまで喧伝しだしたらしい』などとして逆上している。 

そもそも、安倍政権がそういう文書でも出したのかと思ったが、良く記事を見ると、『安倍政権周辺』という言葉で誤魔化している。まあ、そんなこといったら、『蓮舫代表周辺』という名指しでならどんなことでもいえそうだ。

それはともかく、国家の起源について、神武天皇実在論がカルトというなら、同等とか、それ以上のことをいっている国についても同じようにいうべきだ。そこで、『世界と日本がわかる最強の世界史』(扶桑社新書)でも書いたが、中国や韓国の公式歴史観をリテラの無知な方々のために教えてあげよう。 

習近平主席は、しばしば、『5000年の歴史を持つ中華国家』とか仰っている。以前は中国4000年だったはずだが、1000年水増しだ。

韓国・朝鮮は檀君とかいう正史である『三国史記』にも書かれず、民間伝承にだけあった人物を近代になって建国者に仕立て上げ、4000年とかいっていたが、これも北朝鮮が5000年に格上げ。

日本は「日本書紀」で、紀元前660年に神武天皇が大和に小さな国を建国し、それが紀元前1世紀の崇神天皇のとき大和を統一し、本州中央部まで支配を広げ、三世紀の仲哀天皇・神功皇太后・応神天皇のころ全国を統一し、半島に進出したとしてきた。 

これは、古代の天皇の寿命を水増ししているので、系図が正しいとすれば、実際は、全国統一が4世紀、崇神天皇が3世紀、そこから逆算すると天皇家が大和の小領主になったのが紀元前後だ。つまり神武天皇で数世紀、応神天皇で1世紀の可愛い水増しだ。崇神天皇の先祖ではじめて大和にやってきた人物はいただろうから、実在でないと決めつける理由などない。

せいぜい、アショーカ王が信仰した宗教をその200年ほど前に創始した人はいただろうが、それが教典で伝えられる釈迦とどこまで似ていたか分からないというのと同じで釈迦実在を主張したからカルトでもあるまい。

中国の場合は、5000年ほど前というのは、クニができはじめたころで、日本で言えば紀元前2世紀当たりの状態だ。そして、早ければ4400年ほど前にそれなりの支配領域をもつ枠組みが成立し(殷に先立つ夏があればだ)、3000年ほど前に周というゆるい国家連合体が成立し、統一国家として確固たるものは紀元前3世紀の秦の始皇帝による統一だ。

韓国・朝鮮は、客観的にみれば、現代の韓国・朝鮮は新羅の継承国家で、紀元前後にルーツがあるかもしれないが(『三国史記』には建国に日本人がかかわり四代目の王は日本人だと書いてある)、日本が半島に進出した4世紀ごろに大和朝廷より1世紀遅れくらいである程度の領域を持つことに成功し、それが、7世紀に唐が百済や高句麗を滅ぼしたあと、新羅自身も羈縻国(保護国)といしておきたい唐と争いながら、半独立国のような従属国家としてだが、大同江以南をまとめたのが8世紀のことだ。

はたして、以上のような歴史を建国から5000年という中国や北朝鮮、4400年という韓国、2600年と遠慮がちにいう日本のどこがカルト国家というにふさわしいのかリテラさんは言って欲しいものだ。

ちなみに日本の歴史教科書には、神武天皇はごく一部の歴史教科書に『神話』としてだけ載っているだけで記述がないものも多いが、中国の教科書には三皇五帝、韓国の教科書には檀君が堂々と掲載されている。 

そちらは非難しないで、日本のだけカルトというのは、極左というよりは、中国や韓国・朝鮮の国粋主義的カルトにひたすら奉仕しているだけで、私はそういうのをナチスに尻尾を振った英仏のハト派と同様の『変態右翼』と名付けている。

八幡 和郎
扶桑社
2016-12-24