海自次期ヘリ調達を巡る騒動、元凶は内局か?

清谷 信一

さて、海自のUH-Xを巡ってのコタゴタですが、あれこれ調べているのですが、どうも闇が深そうです。

当初ぼくが海自内の人事抗争か、三菱重工に近い将校やOBらの画策、あるいはその両方ではないかと思っていました。ところがそう簡単な話でもなさそうです。

海自UH-X選定で、海幕長を訓戒処分はおかしい。 実は内局の不合理な圧力
http://kiyotani.at.webry.info/201612/article_6.html

UH-Xに関しては海自会議という直轄部隊の長が集まる最高意思決定会議で、海自現用機で、大型という
方針が確認されていました。
当時の現行機といえば、SH-60J,、SH-60K、MCH101ぐらいしかありません。

ですがSH-60Kの転用は現用機とはいえません。データバスなどが組み込まれており、コックピットを含めてシステムの再設計換装、が必要で事実上新たな機体になります。

当初、要求ではMCH-101のローラーブレードを運べることがあり、キャビンが狭く、ランプドアもない60系列はこれだけでもNGです。
さらにEP-3のクルー15名が救助できることが要求されていました。
この点でも、60系列は失格です。

UH-60Jは当然ながら、大型機ではありません。消去法でいえば101で決定でしょう。

ところが、その後要求仕様の策定②で要求が内局からの、競争原理を導入しろとの圧力で書き換えられたようです。露骨な60系列への配慮です。

引越し屋が机やタンスを運ぶトラックを更新するのに、3トンや5トンのトラックが必要なのに普通乗用車を候補にいれるようなものです。

60系列を入れるための露骨な仕様の変更が決定されました。
例えば人員輸送は15名から12名に買えられました。ですが、それでもP-3Cのクルーは全員は「救えません。救難に使用する場合、ストレッチャーや医療 用装備の搭載が必要ですから、救助できる遭難者は1~2名に過ぎません。付け加えるならば、戦時に撃沈された艦艇の乗員の救助も想定されていますが、この 点からも、60系列は適していません。

しかも運用環境ではシー・ステートが2まで落とされました。
露骨に60系への配慮が伺えます。

しかし、これでも60系列には分が悪い。

ところが26年5月14日の会合ではSH-60Kは要求性能を満たしていることにされました。
しかも三菱重工が60KのUH化の具体的な提案をしていません。
わずか調達は15機です。このために事実上の新型機の開発をすると結構コストがかかります。しかも内局から指示があったのか、キャビンの拡大まで検討され ていたようです。そうなれば、当然重量が増えますから、エンジンやトランスミッションまで年功する必要が出てくるでしょう。この場合、更にコストがかなり ます。

つまり60K改良型は既存機とはいえないのに、既存機として候補に挙げられました。

しかも当時は120ノット以上では振動が極めて多くなるという60Kの抱える問題の解決のめど立っていませんでした。MHI製の60シリーズの振動はシコルスキーのものから大きく劣ります。
さらにUH-Xが60系列になれば海自の作戦用回転翼機がほぼ全て60系列になり、メカニカルなトラブルなどがあって、地上待機になった場合、海自ヘリの殆どが地上待機になってしまいます。

内局からの干渉は極めて異常としか言いようがありません。これは政治家からの天の声があったのだ、という推測も市ヶ谷内部ではあるようです。それが事実であれば、大きな問題です。

ただMCH-101の導入にもラライセンス生産という単なる組み立て生産を導入した経緯は怪しいところが満載です。
導入時に出された見積もりは輸入よりも、ライセンス国産(事実上単なる組み立て生産)の方が安いという見積もりが、丸紅からでました。何らかの圧力があったと考えられます。これまた政治家の存在が伺えます。

ですが、要求される性能とサイズ、既存の101の運用効率を考えれば、101の採用は妥当でしょう。他の候補であったNH90はエアバスが防衛省のコンペは信用出来ないと、降りてしまったから尚更です。

因みにMCH-101の2~3機は特警隊が運用可能な改良が加えられております。

具体的には空自のUH-X商戦です。当初から本来の半分のコストで実現可能であると、三菱重工のUN-60Jの改良が型が選ばれました。現行型が50億円 程度ですから、それよりもアップグレードされた新型が、23.75億円で調達できるなどいうおとぎ話を信じるのはアホウしかいないでしょう。
こういうことを続けけていると、防衛省だけではなく日本政府自体の信用も毀損されると思うのですが、国家の信用を既存しても守りたい利権でもあったのでしょう。

また海幕内部に内局にご注進したものがいるということでしょう。それが竹居氏の失脚をねらったのか、三菱重工の利益を狙ったのかは知りませんが。

いずれにしても組織として大変問題がある状態であると思います。

率直に申し上げて、日本のヘリ産業に未来はありません。規模の小さな3社が防衛需要に寄生虫みたいに頼り切っています。自分たちで他の官庁や内外の民間に売れるような機体を作る野心も、向上心もない。
単に防衛省が、数倍の値段でヘリを買っているだけです。

ラ国のほうが稼働率がとかいいますが、これも大概胡乱な話です。PBLを導入し、予備機体を増やし部品デポも国内におけば宜しい。それに戦時の生産がとかいいますが、ラ国といっても現状殆ど組み立てです。どうして戦時の増産に有利なのでしょうか。

政府のこういう寄生虫のような防衛産業、これと癒着している防衛省の体質の改善を図るべきです。
海自ヘリ商戦を仕切り直しするにしても、国産ではなく輸入を前提に選定を行い直すべきです。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
「駆け付け警護」は自衛官の命を軽視しすぎだ
http://toyokeizai.net/articles/-/146208

駆けつけ警護に関してJapan In Depth に以下の記事を寄稿しております。

自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その1 情報編
http://japan-indepth.jp/?p=31070
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その2 火力編
http://japan-indepth.jp/?p=31120
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない。その3防御力編 前編
http://japan-indepth.jp/?p=31185
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その4防御力編 後編
http://japan-indepth.jp/?p=31379
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その5戦傷救護編
http://japan-indepth.jp/?p=31436


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2016年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。