紅白で感じた「女らしさ」の違和感

駒崎 弘樹

あけましておめでとうございます。今年も子育て支援、頑張ります。駒崎です。

さて、大晦日は嫁の実家でゆっくり酒飲みながら紅白見ていたんですね。

ゴジラが出てきたり、恋ダンスをガッキーが踊りそうで踊らないところに萌えたり、

まあいつも通りそれなりに楽しんでいたわけです。

そしたら、なんか途中で司会者のジャニーズの男の人、相葉くんっていうんですか?彼が、モデルのりゅうちぇるとぺこっていうモデルの方々が結婚した、ていうことを紹介したんですね。まあ、そんな個人的なこと、知らないよっていうのがおっさんが思ったことなんですけど、まあそこは良いですよ。年末だし。おめでたいことは、まあみんなで祝おうよ、と。

そのあと、相葉くんが、日本レスリングの英雄、吉田沙保里選手を引き合いに出して「吉田さんはどうやったら結婚できますかね?」って、りゅうちぇるに聞いたんですよ。

はぁ????

お前、何言ってんだよ、と。

吉田沙保里選手だよ。霊長類最強の女子と言われ、2012年にはギネスにも載って国民栄誉賞まで受賞している、我が国が誇るアスリートですよ。その人つかまえてきて、どうやったら結婚できるか?って酷すぎるだろ。

結婚はその人の個人的な問題で、するもしないも自由なんだよ。他人がおいそれと立ち入るべきことじゃないでしょう。それも、国民の大半が見ている番組で、そんなこと聞くべき質問じゃないわけで。

で、それにたいしてりゅうちぇるっていうモデルの男の子が、こう言ったわけですよ。

「すっごい自分磨きしているし、女の子らしいからすぐできると思う。努力しなくていいと思う。アッハハハー」

はぁ???????

お前さ、ちょっと豆腐の角持ってくるから、頭にぶつけて良いかな。

「女の子らしいから、すぐ(結婚)できる」って、なんだよ。

女性は「女の子らしく」女性性を強調しないと、結婚できないのかよ。

別にスカート履かなくなって、料理できなくたって、化粧っ気なくたって、結婚なんてできるだろ。

いわゆる「女の子らしい」女性が好きな男性もいれば、そうじゃない男性だってたくさんいるだろ。

というか、なんで女性に「女の子らしさ」を押し付けるんだよ。それって抑圧だろ。

どう生きたって良いじゃないか。

男だったり女だったり、生物学的にはそうかもしれないけど、だからと言ってその性通りに振る舞わなくちゃいけないなんて、誰が決めたんだよ。

逆に俺たち男性が、男の子らしさを押し付けられてみろよ。

「男なんだから、大黒柱として一人で妻子養え」って言われたら、できるか?俺はできない。

「男なんだから、キッチンに立つな」って言われたらどうよ。アホか、でしょ。

こういう「女らしく」とか「男らしく」とか、抑圧の言葉なんだよ。

ほら、「逃げ恥」で石田ゆり子も言ってたじゃん。「私たちの周りには、たくさんの呪いがある」って。

呪いの言葉なんだよ。

「お前、男なんだからナヨナヨするなよ」「女らしくしろよ、女子力ないな」って、そういう抑圧の言葉は、ストレートの人たちにも呪いだけど、LGBTの人たちには、もはや暴力だよ。

性別に違和感感じてたら、それだけで胸に突き刺さるだろ。結婚しないの?っていう質問に、真面目に答えたら、お前引かないで真摯に聞いてくれんのかよ。ネタにすべきことじゃないんだよ。

2016年、もう21世紀に入って16年も経つのに、いまだにこんなこと言わないといけないなんて、俺は恥ずかしいよ。年末でゆっくりしたいのに、激怒したよ。

その後のイエモンのJAMは俺が高校生の時の曲で、青春の曲だったから感動して泣いたけど、でも除夜の鐘聞きながらモヤモヤしてましたよ。

良いか、おっさんがこんなこと書いても、どうせあんまり誰も見もしないだろうけどさ、でも新しい日本を創るには必要だから、言っておく。呪いの言葉に、気づけ。自分が何気無く使っている言葉に、呪いがかかってないか、立ち止まって考えてみよう。

この日本を、一人一人が尊重されて、誰にも違いをバカにされなくて、誰に許可を取らなくても、伸び伸び自分の可能性を花開かせられる、そんな素敵な国に俺はしたいです。少なくとも俺は新年なんだから、そのくらい願う自由はあるはず。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年1月2日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。