新年だから考える!リーダーは批判を恐れず歓迎すべき

尾藤 克之
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室井氏が運営する一生成長TV。左は英会話講師の甲斐ナオミ氏、右が室井氏

いま、企業で求められるリーダー像とはなにか。実はリーダー研究の歴史は古く第二次世界大戦後のGHQの時代にまでさかのぼることができる。リーダー研究の歴史は、常に変化してきた。「リーダーは先天的なものであり生まれながら持ち合わせている」「IQの高さがリーダー資質に比例する」とされた時代もあった。

その後、「リーダーとは包括的で良好な人間関係を築ける人」というEQリーダーシップ論が台頭する。「リーダーは行動によって規定される」という時代に突入し、近年では、「社会的交換関係」(Social exchange theory) に着目する研究が増えている。

私自身もアゴラでリーダー系の書籍を数多く紹介し、また組織人事系の学会にも所属して情報を収集しているが、リーダー育成に関する解答は未だ見出せていない。結果的に理論が先行しかえってリーダー像を歪めて分かりにくくさせている。

リクルート等を経て独立しリーダー育成などを手がけている、室井俊男(以下、室井氏)が上梓した『部下がついてくる、動いてくれる リーダーの教科書』では、リーダーがやってしまいがちな「間違い」を正し、適切な言動に導くための考え方が丁寧に説かれている。

■リーダーは批判を恐れてはいけない

――会社への不満、上司への不満、もしかするとあなたへの不満、あるいは家族への不満など、人にはそれぞれいろいろなことでの不平不満があるものだ。ポジティブな内容ではないし、積極的に聞きたい内容ではないかも知れない。

「不平不満を言ってくる人は、面倒くさいという印象で捉えられがちでもあります。でも、『問題意識が高いからこそ不満として感じてしまう』と捉えるならば、あなたが聞くときの気持ちも変わりませんか。」(室井氏)

「リーダーとして現場との信頼関係を築く上でも、メンバーから不平不満・不安・不便についての話が出たときは、積極的にしつかりと聞きましよう。」(同)

――あなたが知らなかったり気がついていない課題や問題を、そこではじめて知ることになることがあるかも知れない。しかし、大きな問題になるかもしれないことが、まだ小さい芽のうちに発見できる機会になることも考えられる。

「そのメンバーの心に何かの負担があるなら、それを軽くしてあげたり、とり除いてやることはリーダーとしての役割ではありませんか。不平不満を聞くことは、情報収集の大切な機会なのです。もしその過程で、本当に改善すべき課題があるのなら、『ぜひ、それについてはとり組みを考えてみたいので、提案して欲しい』と依頼をします。」(室井氏)

提案が出てきたら多少心許ないところがあったとしても、やらせてみることです。それが積み重なれば、チーム内に積極的に提案をする気運が広がっていくからです。」(同)

――提案しても回答までに時間がかかり、何の返答もなかったりする職場では提案する人はいなくなる。うまくいかないケースは、ほとんどがそのあとの対応が悪いことが原因になっていることが多い。

「また、言われても、どうしようもないこともあります。例えば、給与や待遇に対して不満を言われても困るというのが正直なところでしょう。そのようなときには、話の内容に同意する必要はありません。下手に同意してしまうと、何かの折に「リーダーもそう言ってましたよ」などと言われて、矢面に立たされてしまいます。」(室井氏)

「また、あなたに対する不満だったとしても、深刻にとりすぎたり必要以上に気にする必要はありません。あなたへのフィードバックだと受けとり、もし自らに誤りがあるならば、すぐに認めることか大事です。必要があれば潔く改善するという姿勢が、メンバーにあなたへ対する尊敬の気持ちを生むのです。」(同)

■メンバーに対しての説明責任がある

――先ほどと場面を変えてみよう。「このままでは会社が回らなくなる!」といったときに、会社では「変革」「改善」といった言葉が使われるようになる。従来の延長線上にあるような方法では通用しない場合、抜本的な見直しが求められるためである。

本来、上層部の人間は、全体が見えている人でなければいけない。会社や組織として何が大事で何がそれに付随することなのかを理解することである。リーダーはこのような時、何に留意すべきなのだろうか。

「階層が上がって指示を出す立場になると、メンバーから『今回の指示は、この間言っていたことと全然違いますよね?どうなっているんですか』などと言われることもあるかもしれません。そういうときにも、『なぜ変えるのか』『なぜ変えてもよいのか』という意図を明確に説明することで、不信感を払拭できるはずです。」(室井)

――やり方や目標値を変更する場合には、変えてもよいものとして、変える理由を伝えなければいけない。理由が不明瞭であれば「根本的なことがわかっていない」と思われて信頼をなくしかねないので注意が必要だ。あなたがリーダーならいかなる場合でも逃げてはいけない。あなたにその覚悟はできているだろうか。

リーダーは誰しも、良いチームを創ろうと思い日々業務に邁進する。しかし、正しい方法を知らないと、思いは空回りするばかりで成果を創出することが難しくなってしまう。そのようにならないためにも、リーダーの心構えについて覚えておきたいものだ。

尾藤克之
コラムニスト

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