自衛隊はオスプレイの空中給油をやるのかね?

清谷 信一

日本にも導入予定のオスプレイ(GATAGより:編集部)

さて、最近空中給油訓練中の米海兵隊のMV-22が墜落しました。さて自衛隊はオスプレイで空中給油をやるんでしょうかね?

ご存知のようにこの中期防で防衛省は17機のオスプレイを導入する予定ですが、その運用構想は明らかにされていません。中谷防衛大臣(当時)は記者会見でぼくの質問に答えて「何機入れるかわかりません、買ってから考えます」とこたえました。

つまり、防衛省はオスプレイでどの程度の部隊を編成するのか、つまりどの程度の部隊規模もわからずに、その運用構想もわからないまま、何千億円もかかるオスプレイの導入をきめたということです。

その御蔭で、既存のヘリ部隊が圧迫を受けております。かつては500機は会った陸自のヘリ部隊は350機、あるいはそれ以下に減らされるでしょう。AH-64D調達の無様な失敗もあり、AH-1Sはこっそり、ひっそり用途廃止が進んで、攻撃ヘリ部隊はなし崩しに壊滅するでしょう。

しかも既存のAH-64Dの機数では、部隊の稼働機は数機にすぎず、単なる予讃の無駄遣いになっています。

別に攻撃ヘリを全廃してオスプレイというならば、それはそれで一つの見識です。ですが、陸自航空隊のポートフォリオ、稼働率、部隊構成の青写真もなく「オスプレイちゅう、鉄の鳥ば買うだ」と大枚叩くのは土人の所業です。

「オスプレイちゅう、鉄の鳥を買えば、我が国は安全だべ」という土人みたいな発想です。軍事の当局の発言じゃありません。他の民主国家だったら大問題です。ところが政府に大変優しい防衛記者クラブの皆さん方は、オスプレイ反対の会社も含めて後追いの取材もしていないようです。不思議ですよね。

それとも記者クラブの諸君には「予算」とか「政策」という概念がないんでしょうかね?

防衛省に構想運用はあるのだ、それを隠しているだけなのだ、と主張する、当局の走狗みたいな国士様がおられますが、バカも休み休み言って欲しいものです。

いやしくも民主国家においては、政府は税金で調達する防衛装備は議会と納税者に説明する義務があります。それをしないならば、自衛隊は黙ってミサイル原潜や空母も買っていいことになります。

民主国家と文民統制の基本ぐらいは抑えて欲しいものです。

そんな必要は無い自衛隊を無条件で信用しろと仰るならば、そういう人たちは中国とか北朝鮮とかジンバブエに移住でもすればいいのです。民主主義よりも共産主義や独裁主義の国との親和性の方が宜しいかと思われます。

さて、防衛省は調達が決まったオスプレイで空中給油をするのか、しないのか明確にしていません。

仮にするならば、空自のC-130の空中給油機型を増やす必要があるでしょう。
あるいはC-2の給油型を開発する必要がありますが、そんな話はありません。

KC-767は空自の戦闘機で手一杯、しかもオスプレイとは給油方式が違うので使えません。C-130の給油型はこれまた空自の救難ヘリしか想定していません。数もありません。

陸自のオスプレイに空中給油を行うならば、少なくとももう数機の空中給油機が必要です。

本来オスプレイを調達するのであれば、空自の空中給油機もセットで検討すべきだし、それであれば既存のC-130Hの給油型を増やす計画もあってしかるべきです。

空中給油による航続距離延長を行わないのであれば、オスプレイの価値を毀損するでしょう。費用対効果はわるくなります。

もしかすると、空中給油をする前提ならば、だったらUH-60やらCH-47に空中給油機能を付加した方が、ベターじゃない?という突っ込みがはいって、オスプレイ導入という恐らくは「政治目的」が達成できなくなるからかもしれません。

多分防衛省は既存のヘリに空中給油を行った場合と、オスプレイ導入して空中給油した場合との比較すらしていないんじゃないでしょうか。

また空自が陸自のオスプレイに給油をしないならば、同盟国である米軍のオスプレイにも給油はできません。
相互運用と共同作戦上デメリットになるのではないでしょうか。

自衛隊が自分のオスプレイに対する空中給油を行う手段を導入しなくても、同盟国たる米国の空中給油機による空中給油は検討すべきだし、訓練すべきでしょう。

それすらもしないのでしょうか。であれば政府とは別サイドのオスプレイ土人の方々は、「そら、鉄の鳥の給油は危険だべ」と非難するするでしょうねえ。

本来政府は単にオスプレイは安全と、木で鼻をくくったような「大本営発表」を繰り返すのではなく、ヘリとも固定機とも違うオスプレイの運用、それ故に起こりうる人的ミスの可能性なども、事細かく調べて、できる限りの情報開示をすべきでした。

ところがそれをやってこなかった。というよりも出来ないでしょう。政治的に導入が決定しているので、アリバイつくりのために、形ばかりの調査しかしていないんですからまったくもって当事者意識が欠けています。

ところで、オバマ氏は「オスプレイ買ってくれたら、全面的に守ってあげるよ」という約束してくれたんですかね。そういうコミットメントもないまま、多額の費用を投じて、自衛隊弱体化させるのが「戦後レジームからの脱却」というやつなんですかねえ。

防衛記者クラブ会員諸君はぜひとも、こういうことを大臣会見なり、幕僚長会見なり、次官会見なりで質問して欲しいものです。それとも「沖縄県民の感情をどう思われますか」とか、情緒を聞くのが記者クラブのお仕事なのでしょうか。「鉄の鳥はあぶねえだ、根拠?神様のお告げだで」と具体的検証もしないで、危ない、危ないと煽るのでは新聞土人です。インテリの記者さんのやることじゃないと思いますが。

どうしても情緒だけで記事を書きたいならば、新聞記事ではなく、詩人に転向しては如何でしょうか。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。