【映画評】アンダーワールド ブラッド・ウォーズ

長老の命を奪ったために、仲間から追われる日々を過ごすヴァンパイア族の女処刑人セリーン。力を拡大したライカン(人狼)族の猛攻を受けて劣勢を強いられたヴァンパイア族は、兵士養成のためセリーンを部族に呼び戻す。その特別な血ゆえにヴァンパイア族、ライカン族両方から命を狙われる、行方不明の娘イヴを守るため、セリーンは部族に戻るが、そこには罠が待ち構えていた。北のヴァンパイア一族に協力を仰いだセリーンは、急襲したライカン族の長マリウスと死闘を繰り広げ、窮地に陥るが…。

ヴァンパイア族とライカン族の、世紀を超えた闘いを描く人気シリーズの最新作「アンダーワールド ブラッド・ウォーズ」。毎度おなじみの戦いが描かれるが、処刑人セリーンは、愛したマイケルを失い、娘イヴとも生き別れ、孤独な逃亡生活を送っている。双方の部族から狙われながら、長老の一人トーマスの息子デビッドだけが味方という危機的状況の中、同族であるヴァンパイア族の悪女が権力に取りつかれ、セリーンを執拗に狙うという展開だ。新作とはいえ、物語に新鮮味はまったくないし、闇の中で戦うという設定上、画面全体がとにかく暗い。モノクロの画面と雪と氷の映像はクールだが、さすがに今回は暗すぎる。だが、だからこそ、セリーンがある方法で新しい力を得てからの、白を基調とした画面が美しく映える。といっても、この新しい力を手に入れるプロセスの描き方がかなり雑だ。水がポイントなのはわかるが、あまりにもあっさりとしているので拍子抜けしてしまった。

本作のヒロイン、ケイト・ベッキンセイルは、タイトなスーツに身を包んで、相変わらずセクシーだが、キャストに海外TVドラマで人気の俳優が多数出演しているので、ファンにはたまらないだろう。特に悪女役のララ・パルヴァー(「SHERLOCK/シャーロック」のアイリーン・アドラー役)はなかなかハマッている。物語はまだまだ続きそうな予感。中でも、娘イヴの存在が今後の展開にどうからむかが気になるところだ。
【55点】
(原題「UNDERWORLD: BLOOD WAR」)
(アメリカ/アナ・フォースター監督/ケイト・ベッキンセイル、テオ・ジェームズ、トビアス・メンジーズ、他)
(クール度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年1月12日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。