蓮舫さんの二重国籍問題が話題となるなかで浮上した問題に、台湾の人々に対する日本の不条理な扱いがある。
台湾の地位の問題については、私も通商産業省(現経済産業省)で中国・台湾問題の担当課長だったので、いろいろ知っていることもあるが、職務上知り得たことなのでいえないこともあるが、「蓮舫「二重国籍」のデタラメ」(飛鳥新社)のなかでも一章を割いて論じておいた。
ひとつの中国原則日中国交正常化のときには、まだ蒋介石も健在だったし、あくまでも中国の正統政府を標榜していたのだから、北京政府を正統政府として、台北政府は国家でないとして切り捨てても仕方ないというところがあった。
台湾では、現在の与党である民進党は独立を綱領に掲げたままだ。「正名運動」と言って、企業などさまざまな組織の名から中国を追放しようという動きがある。
このように、独立を望む政党が政権を握っているとなると事情は違う。それに、一般に旧宗主国がかつて国民であった人やその子孫の利益に関心を持つのは世界中ある程度は当然と見られていうのだからもう少し配慮すべきだ。
とは言っても、日中国交正常化のときの枠組みを崩すのもまた代償は大きいものになるに決まっている。忍耐を持って二つの要請の調和を図っていくしかないのである。
しかし、トランプ大統領がひとつの中国原則の見直しを進めていくとすれば、少し事情がかわってくるだろう。
そんななかで、台湾に日本が設置している窓口機関「交流協会」が名称を「日本台湾交流協会」に変更し、中国外務省が「強い不満」を表明しする事件があった。
日本の対台湾窓口機関「交流協会」は28日、2017年1月1日付で名称を「日本台湾交流協会」に変更すると発表した。交流協会台北事務所は事実上の日本大使館として機能しているが、これまでは名称に「日本」が含まれてなかた。
交流協会は1972年に日本が台湾と断交したことを受けて、台湾との窓口になる機関として設立された。
この変更は、安倍政権からの、台湾に対するプレゼントであり、北京はかなり怒っているのだと思うが、トランプ次期大統領がひとつの中国原則を見直していきそうで、中国がこんな細かいことを問題にするどころでないタイミングでの素早い動きだといえる。
ちなみに、台湾側のカウンター・パートは亜東関係協会。東京の事務所は、「亜東関係協会東京弁事処」と称しており、蓮舫さんが、1985年1月21日に日本国籍を取得して、「赤いパスポートを見て悲しく寂しい思い」をしたのち、二重国籍となったことを届けたときはそういう名前だった。
しかし、1992年5月20日から「台北駐日経済文化代表処」と改称している。その最高責任者である「駐日代表」は、実質的には「中華民国駐日大使」に相当する。
現在の代表である謝長廷氏は、民主進歩党主席(2000年4月20日 – 2002年7月21日),高雄市長(1998年12月25日 – 2005年1月31日 )、首相に当たる行政院長(2005年2月1日 – 2006年1月25日)をつとめた台湾政界の超大物だ。