性教育の欠落で失われる、子ども達の人生

駒崎 弘樹

望まない妊娠相談を、特別養子縁組につなげる事業を運営している、NPO法人フローレンスの駒崎です。最近、妊娠相談を受けていて、中学生(!)からこんな相談が多々来ます。

「ルナルナで排卵日をつけていて、排卵日だけを避ければ、妊娠しないと思っていました」

「彼女とやっちゃって生理来ないんすけど、コンドームはいく直前につけたから、大丈夫かと思ってました・・・」

ちょ・・・。

性に関する、基本的な知識がないんです。だから、避妊もせず(できず)、妊娠して中絶につながってしまう。もし中絶期間が過ぎていれば、望まない妊娠となり、多くは「自主退学」という名の強制退学の処分となり、産んで育てていこうとすると、低学歴ゆえに非正規化しやすく、貧困化していくわけです。

また、望まない妊娠・出産によって、にっちもさっちもいかなくなり、子どもを殺す選択をした高校生もいます。

殺人容疑で16歳の女子高生逮捕=栃木県矢板市「JR矢板駅」トイレで出産、遺棄の疑い
https://more-news.jp/article/detail/4330

性教育が足りない

全国の小中学校ではビデオを見せる等、何らかの形で性教育は行われています。しかし、2000年代に山谷えりこ議員ら保守派議員によって繰り広げられた性教育バッシングによって、教育現場に萎縮モードがもたらされました。

(出典:学校の性教育に対する近年日本における批判動向「性教育バッシング」に対する政府対応 

その結果、多くの学校現場においては、突っ込んだ内容の性教育は行われていません。また、家庭における性教育も広がっておらず、子ども達にも性の知識は浸透しているとは言い難い状況が生まれています。

( 図表出典元 http://www.unicharm.co.jp/girls/family/gender/01.html )

そうした影響もあり、日本は中絶大国となっています。出生数が100万人に対し、中絶数は20万人。少子化少子化と叫ばれながら、です。

( 図表出典元 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/14/dl/kekka6.pdf )

性教育の投資対効果

性教育は望まない妊娠を防ぐ効果はあるのか。あります。秋田県でなされた調査によると、中絶率をピークの3分の1に減少させました。

( 図表出典元 http://common3.pref.akita.lg.jp/kosodate/nurturing/course23/detail.html?course23_id=92 )

「子どもにセックスのことなんて教えたら、寝た子を起こすことになって、バンバンしちゃう!」というのは誤っていて、正しい性知識が身を守ることに繋がっていくのです。

【次の一歩とリソース】

子ども達を守るため、性教育について考えてみましょう。また、専門家や性教育を行うNPOをフォローして、知識を身につけましょう。

僕のお勧めは、以下の二者です。

・坂爪真吾 さん

http://www.whitehands.jp/ceo.html

NPO法人ホワイトハンズ代表理事で、公共的な性のあり方を提言する。実践する思想家。何度かお会いし、著作も読ませて頂いていますが、抜群に面白いです。僕は彼の本を読んで初めて、「男の性って、今までネタにしかできなかったけど、「ケアする」という姿勢を持って良いんだ」と気づいて目から鱗でした。

NPO法人ピルコン

代表の染矢明日香さん自身が、望まない妊娠と中絶を経験したことから、性の正しい知識を啓発しようと立ち上げたNPO。各地で性教育に関する学生向け、保護者向け講演活動等を行われています。ピルコンの主催する講演会や勉強会に参加するのも、次の一歩です。

偶然ですが、染谷さんは大学の後輩ということで、何度かお会いして、こんな後輩がいるんだなぁ、と誇らしい思いになりました。

最後に、もし周囲に望まない妊娠で不安を抱えている友人や、子どもたちがいたら、遠慮なくフローレンスの「特別養子縁組・妊娠相談『にんしんホットライン』」URL hotline.florence.or.jp/  電話番号:  0120900504 )に相談できるよ、とお伝え下さい。

性や性教育について、学んで、考えて、周囲に話していきましょう。照れちゃうし、エロいと思われるのは嫌かもしれないけれど、それが自分と、子ども達を守ることに繋がるとしたら。戸惑っている場合では、ないのです。 

注:

・スライドは坂爪真吾さんも登壇されたこちらのイベントでの投影資料からお借りしました。ありがとうございます。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年1月19日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。