太平洋戦争末期の1945年。マクベイ艦長率いるアメリカ軍の巡洋艦インディアナポリス号は、極秘任務を下される。それは、戦争終結を目的とした原子爆弾をテニアン島に輸送する任務だった。日本軍の猛攻をかいくぐりながら、何とか目的地に到着し任務を終えたマクベイ艦長と兵士たちは、次の任務地へと向かって出航する。だが、橋本少佐率いる日本軍の潜水艦から発射された魚雷が艦を直撃し、インディアナポリス号は沈没。生存者たちは太平洋を漂流することになる…。
原子爆弾の材料輸送の極秘任務を遂行した海軍巡洋艦インディアナポリスの艦長と兵士たちの過酷な運命を、史実をベースに描く「パシフィック・ウォー」。太平洋戦争の知られざる事実を描く戦争アクション…といった宣伝文句だが、本作は、アクション映画というより、むしろサバイバル映画。インディアナポリス号は、日本の魚雷によって沈没し多くの兵士が命を落とすが、かろうじて生き残った者たちには、飢えと渇き、そして獰猛な鮫たちが襲い掛かるのだ。もはや鮫映画と言えるほど、その状況はすさまじい。極限状態での人間ドラマ、とりわけ、一人でも多くの部下の命を救おうと奮闘するマクベイ艦長の苦悩のドラマは見応えがある。
だがしかし。非常に残念なのは、あまりにもCGがお粗末なのだ。ハリウッド発の映画で久しぶりにこんな粗雑なCGを見たが、低予算映画の悲しさなのだろう。マクベイ艦長を演じるニコラス・ケイジをはじめ、役者陣(日本からは竹内豊が参加)は意外なほど好演している。軍艦インディアナポリスの役割と悲劇は知っているが、その後の軍法会議のいきさつは日本ではあまり知られていないはず。むしろ、裁判劇にすれば面白い作品になったかもしれない。ちなみに鮫映画の金字塔「ジョーズ」では、インディアナポリス号の生き残りという設定のキャラクターがいたことを、付け加えておく。インディアナポリス号の受難は、鮫の恐ろしさを広く知らしめた事件だったのだ。
【50点】
(原題「USS INDIANAPOLIS: MEN OF COURAGE」)
(アメリカ/マリオ・ヴァン・ピーブルズ監督/ニコラス・ケイジ、トム・サイズモア、竹内豊、他)
(サバイバル度:★★★★☆)
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年1月19日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。