先日、「トランプ政権のドル安円高路線が見えつつある」という記事を書きました。実際、その後のドル円は書いた当時の114円台から一気に112円台まで下がり、現時点(2月1日16:22)では113円台に回復しましたが、ドル円は125円まで上昇するといったトランプフォリア論は少し現実味がなくなってきました。トランプ大統領も日本の円安を具体的に批判し始めましたし、2国間協議への為替条項を加えることも示唆しています。
しかし一方で、118円近くあったドル円が下落したのは就任前に行われた具体的な経済政策が語られることのなかった記者会見(日本時間1月12日午前1時)や就任演説、そして連日ネガティブな報道がなされている入国制限などが原因で、トランプ大統領の公約である「大型インフラ投資」「大型の法人減税等」そして「FRB長期金利利上げ」が行われればドル円はドル高円安に再び向かうのではないかという期待も依然としてあるのは事実です。私自身も年始年末にワシントンDCを訪れたときはそうなると希望を持っていました。
確かに、トランプ大統領は電光石火のごとく選挙時に公約で掲げた政策を10日足らずで次々に実行に移しています。これらは議会の承認が不要な大統領令を使っているからというのもありますが、その勢いで議会の承認が必要な大型インフラ投資や大型減税も自慢の交渉力で実行に移せてしまう気もします。
仮に大型インフラ投資や大型減税等の積極財政の実行が現実となった場合、当然、ドル円はドル高円安に向かうわけですが、ここで一つの疑問が生じます。現在のFRB利上げ路線を継続したままの状態はトランプ大統領にとって好ましいのか?ということです。
一般的にインフラ投資と減税等による積極財政を実施すれば需要が喚起されて国民所得も増えます。ただその分、金利をさらに上昇させてしまう現在のFRB路線だとお金を借りて何かを買おうとか投資しようとか思わなくなるため民間投資が増えないというクラウディング・アウトになってしまうのではないでしょうか。(この経済学の説明が間違ってたらすいません。)
つまり、これを避けるには、現在のFRB利上げ路線を放棄して逆に金融緩和政策をとっていく必要があると思います。利上げが放棄されれば現在の米国10年国債利回りは下落するために、ドル安も実現できてトランプ大統領が行おうとしている積極財政(大型インフラ投資、大型減税)の効果も最大化できます。
以前、トランプ大統領はイエレン更迭発言もありましたがこういう理由からではないでしょうか。先日は意向に逆らった司法長官代行をクビにしたことが物議を醸し出しましたが、もしかするとイエレン議長も・・・というのは考えすぎでしょうが、少なくとも現在、私たちが期待している日米金利差と積極財政によってドル高円安がさらに進むという楽観的な期待は持たない方がいいかもしれません。